真夏の怪談

「しっぽの声」という漫画がある。動物福祉、動物愛護について、様々な種の動物と課題を取り上げて紹介しているのだけど、まあ漫画なので誇張もあるだろうと思っていた。その辺の猫を捕まえてほとんどケアもせず(場合によっては繁殖もして)有償譲渡する団…

カレル・チャペック「ダーシェンカ」

動物愛護週間(9/20-26)にちなんで、近所の図書館で組まれていた特集コーナーで見つけた。チャペック、犬好きだったんだな。 チャペックの愛犬が産んだ子犬(ダーシェンカ)がよそに貰われていくまでの観察記録と、子犬に向けて語るチャペックのおとぎ話が…

「日本の農山村をどう再生するか」「人イヌにあう」

「日本の農山村をどう再生するか」 三次や世羅や神石高原や安芸太田に行くと、いつも不思議に思うことがあった。この辺りは過疎化が著しいエリアである。しかしそもそも、何故減るほどの人口がかつていたのだろうか? これらのエリアは寒冷地で耕地も狭く、…

「漂海民」羽原 又吉

沖浦さんの本の中で「家船についてよくまとめられた本。(日本の家船がなくなりつつある現況では)これ以上の本は出て来ないだろう。」と紹介されていた本。初版は1963年でかなり古いので、どうだろうかと思って読んでみたら、沖浦さんの本より断然良かった…

「瀬戸内の民俗誌」「瀬戸内の被差別部落」沖浦和光

「広島を知ろう」キャンペーンの一環で手を伸ばした本。瀬戸内海でみられたという家船、島しょ部の文化を知りたくて読んでみた。 島しょ部の古代からの歴史、歴代の権力との関係について記述された本。島が農地には向かず、漁や海上輸送や警護を生計としてき…

「白い病」

「山椒魚戦争」、「R.U.R」で知られるカレル・チャペックの戯曲。思わず手に取った。 COVID-19が、もっと醜悪な見た目に変わる感染症だったらどうだっただろう、と思うことがよくあった。「EDEN」に出てくるウイルス疾患のように見た目が変わる、しかも急速…

「犬たちの明治維新」

幕末の偉人たちと犬の関係から、文明開化が日本の犬に与えた影響、あるいは犬文化(狆や犬の名前等)まで。時折牽強付会に感じる記述も出てくるが、まあ面白かった。読み応えがあったのは、西郷隆盛と犬の関係。西南戦争に何故犬を連れて行ったのか、中央政…

「復権の日月」

1か月ほど前に長島愛生園に行く機会があり*1、慌てて事前学習のために数冊読んだ本の中の一冊。患者の権利闘争の記録本で、質量ともに結構なボリュームだった。愛生園に行くまでに読み終わらず、行った後にようやく読了した。 戦後1943年に特効薬としてプロ…

「ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ」

携帯を目覚まし代わりに枕元へ置いて使っていた。夜、寝る前や寝ている途中で目が覚めると、携帯をいじってネットを見ていた。この習慣がもう10年くらい続いていた。しかし、ふと「寝る前に自分の考えを思う存分楽しみたいな」と思った。でも枕元に携帯があ…

「結婚の奴」能町みね子

Twitterで能町さんをフォローしているので、絶えず流れてくる*1本のレビューに惹かれて読んでみた。くそ、まんまと販促に引っかかってしまった……。悔しいので、図書館で借りて読んだ。で、読み始めたら一気読みだった。 彼女とは歳が近く、東京で遊んだ時期…

ナチ本3冊

夏季休暇中に読んだ本が、何故かどれもナチス関連の本だった。 「増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊」 予備役として召集された人たちが、ユダヤ人の虐殺任務にかりだされ、どのように反応し、どのように馴らされていったのかを検証した本…

大草原の『小さな家の料理の本』

何故か急に「大草原の小さな家」のことを思い出した。「大草原の小さな家」といえば、実に美味しそうな料理、菓子、飲み物の描写が印象深い。今あれを読んだら、あの時のように美味しそうだと思うのだろうか? 特に私のお気に入りだったバニティ・ケーキは一…

「そこに僕らは居合わせた ―語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶―」

ナチスドイツ時代に10代だった人達の思い出をまとめた本。一話一話のエピソードが数ページしかないのでサクサク読めた。みすず書房、こういう本も出しているのね……。 そこに僕らは居合わせた 作者: グードルン・パウゼヴァング,高田ゆみ子 出版社/メーカー: …

犬本5冊

「日本犬の誕生」、「戦時下の日本犬」、「犬の日本史」 前者が明治~戦後の日本犬を取り巻く状況について、後者が第二次世界大戦下の日本にいる犬(日本犬を含む)を取り巻く状況についての本。テーマと記述する時代が近い分、色々比較してしまう。前者は南…

犬の名前

この連休中は、犬に関する本を数冊読んでいる。優秀な日本犬のイメージには、祖先とされる狼への憧れが内包されていたという。それは「志狼(シロ)」や、「豪狼(ゴロ)」という犬の名前にも表現されていたとか。 「~ロ」って、狼から来てたのか! 実家の…

LOG HORIZON 1-3巻

客から勧められ、話題作りにいいかと思い読み始めた。今更ライトノベルを読むことになるとは……と思っていたが、読み始めると結構面白い。気の利いた比喩や複線、文章の情趣はないけど、ストーリーはさくさく進んでいく。「RPG世界に取り込まれた主人公が、仲…

「アディクションとしての自傷」松本俊彦

爪噛みや抜毛は、単に習癖というには少し違うような気がする。嗜癖の要素があるし、広義の自傷ではないか。そのようにうっすら思っていた。その「うっすら思っていた」ことに確信を持たせてくれた本。あちこちに書いた記事を1つにまとめた本らしく、章ごと…

求めよ、さらば道は開かれん

職場で料理教室をしようという企画を立てていたのだけど、実のところメニューをどうしたものか悩んでいた。限られた時間と設備で、簡単に作れて実用性の高いメニューや献立とは何だろうか。 今日、全く別件で市民図書館に行った際、カウンターにあった子供向…

元素生活

本屋に寄ったら、帰り道に読む本が欲しくなり購入。イラスト分類はわかりにくいが可愛い。各種元素に関する雑学も楽しい。一番衝撃だったのは、元素周期表の元素数が増えていたこと。ウンウンオクチウムって何……。科学は発展し続けているのだなあとしみじみ。

心的外傷と回復

ヒステリーの発見と再発見、PTSDが確立されるまでの過程をわくわくして読んだ。冒険譚を読んでいるような感じ。さらに中井久夫の訳が格調高いというか、文学的な味わいがあってしみじみする。必要があって読んでる本にこういう雰囲気の本はあんまりないから…

「股間」江本純子

股間作者: 江本純子出版社/メーカー: リトルモア発売日: 2006/07/29メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 66回この商品を含むブログ (16件) を見る 図書館で物色している時に偶然見つけて借りてきた。表紙がコレなために電車内で読めないので、スケジュール…

旅先で読書(私の場合)

JR九州の機関誌今月号で、恩田陸が「旅先で読書」というタイトルのエッセイを書いていた。読んでいたら、一昨年自転車旅行に行った時のことを思い出す。あの時私は雨が降ったら旅館で1日過ごすつもりでいたので、暇つぶし用に本を一冊持って行った。旅行中…

「銃・病原菌・鉄」ジャレド・ダイアモンド著(草思社文庫)

先日、中島みゆきのことでAと連絡を取った時に教えてもらい、通勤中の楽しみとして読んだ本。10年前のベストセラーということだったが、非常に刺激的で面白かった。一番興奮を覚えたのは、筆者が主張の裏付けとなるデータを集める方法論のところ。文化人類学…

車中で読む本

ブックオフにて100円の文庫本売り場を物色。車中で読む本を選ぶ時は結構悩む。眠るために読む本なので、あまり面白過ぎると眠れなくなってしまうので困る。車内消灯時間が早いので、長編もだめ。エッセイや短編が良いけど、心に波紋を呼ぶような文体・内容の…

電車の中の暇つぶし

普段出先で本を買うことなんて滅多にないのだけど、何故かこの時は本を2冊持っていた。長旅になる予兆だったんだろうか。どちらの本も車内で読むのは相当恥ずかしかったけど、手持無沙汰で数時間経っている辛さには代えられない。 吉井和哉のおセンチ日記 G…

「私は誰になっていくの?―アルツハイマー病者からみた世界」クリスティーン・ボーデン

アルツハイマー病患者が自分の病気について書いた本。非常に面白かったのは、アルツハイマーの症状である視覚障害や注意障害、そして記憶障害が現れてから、彼女がどのように外界を知覚し、情報の処理しているかを説明している第7-11章。限られた能力をフル…

「やせる旅」都築響一

GW頃にまた自転車旅行したいと考えていたのだが、来年度は金銭面やスケジュールの関係から、GWは家で仕事する方が望ましいという結論に至る。来年度への心配や、楽しみにしていた企画の頓挫で腐る気分を紀行本で紛らわそうと、都築本に手を出した。 都築本と…

How to Take a Japanese Bath

会長(仕事の大先輩)の強い要望により、シャガール美術館へ。私自身はシャガールがどうでも良かったのと、道中のタクシー運ちゃんによる「大したことないですよ」の一言で美術館に入館する意欲はきれいさっぱり無くなり、ミュージアムショップをうろうろ。…

「災害の襲うとき―カタストロフィの精神医学」

大著、という言葉がピッタリのレビュー本。主に第二次世界大戦後〜1980年代中盤までの災害ストレスについてまとめている。初版は1989年刊行(原著の刊行は1986年)で、PTSDの概念すらまだ確立してない時期に出されているので、随分古い本ではある。しかし、…

「点と線」松本清張

通勤駅の構内にある図書コーナーで借りて(今更)初めて読んだ。こういう機会で出会わなければずっと読まずにいた本だと思うが、読みだしてみたら面白くて止められなくなってしまい、帰宅してからも読み続けて一気に全て読んでしまった。 昭和30年代の風俗描…