「犬たちの明治維新」

 幕末の偉人たちと犬の関係から、文明開化が日本の犬に与えた影響、あるいは犬文化(狆や犬の名前等)まで。時折牽強付会に感じる記述も出てくるが、まあ面白かった。読み応えがあったのは、西郷隆盛と犬の関係。西南戦争に何故犬を連れて行ったのか、中央政界を離れてからの西郷は自分と社会をどう捉えていたのか、一つの説として読むと面白い。「西郷の言動は推測し難い」という行が何度も出てきながら、筆者の推測が披露される。それはそれで成程と思わせるのだが、実はもっと異なるのではないかと思わされるところも面白かった。あと、狂犬病が文献のあちこちに登場するのが新鮮で何とも恐ろしかった。昔は狂犬病が実に身近だったのだな。

 いわゆる「和犬」の誕生にも触れるかと思っていたが、この辺は全く触れていなかった。最終章で天然記念物に指定された以外の和犬たちが生き残らなかったのは、戦争の供出が理由であると説明され、こんなところにまで戦争の影響があったのかと愕然とした。

文庫 犬たちの明治維新: ポチの誕生 (草思社文庫)