ナチ本3冊

 夏季休暇中に読んだ本が、何故かどれもナチス関連の本だった。

 「増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊」

 予備役として召集された人たちが、ユダヤ人の虐殺任務にかりだされ、どのように反応し、どのように馴らされていったのかを検証した本。予備役は現役の兵隊にはならない、30代以上の人達が中心である。家庭を持ち、自分の仕事のキャリアもある程度あり、社会人としての経験を備えた「大人」が、非戦闘員を追い立てて殺す行為をどのように捉えたのか興味深く読んだ。また、その「大人」は、今の自分と容易に重ね合わせられるので、その意味でも現実感を持ちやすかった。

 最初は「普通の人びと」を虐殺の最前線に立たせるのだけど、虐殺行為に馴染まないと見ると、最終的に手を下す作業は慣れた傭兵部隊に任せ、「普通の人びと」ユダヤ人の誘導と収容業務に変更している。そうして殺人に加担はさせるが、責任を感じないで済むようにさせていた。日本軍だったら、集団圧力をばんばんかけて無理矢理行為に慣れさせるだろうけどなあ。この辺の「無理をさせなさ」具合は、妙に手慣れた印象を持たせて逆に怖い*1。流石家畜の扱いに慣れた民族だなーと思わせるというか。

 第101警察予備大隊を研究した研究者は他にもいるのだが、他の研究者の主張への反論を、様々な公文書のデータを組み合わせて展開していたのが実に興味深かった。歴史学がどのように研究を行い、エビデンスを固めていくのか、その手法を垣間見た感じ。

増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

 

 

ナチスと動物―ペット・スケープゴートホロコースト

 「血(遺伝)によって受け継がれていくこと」、「ユダヤ人は他民族(異教徒)の血を使った儀式を用いる」というデマをナチスがうまく使ったことを、様々な動物の扱い方によって説明した本。だが「普通の人びと」と、次に紹介する「ナチ 本の略奪」のインパクトが強過ぎて、内容を殆ど忘れてしまった。(というか、「ナチ 本の略奪」を完読するのに時間がかかり過ぎて内容を忘れた。)

ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト

ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト

 

 「ナチ 本の略奪」

 

*1:いや、日本軍の野蛮さも大概恐ろしいが、それとはまた質の異なる恐ろしさを感じる。