「ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ」

 携帯を目覚まし代わりに枕元へ置いて使っていた。夜、寝る前や寝ている途中で目が覚めると、携帯をいじってネットを見ていた。この習慣がもう10年くらい続いていた。しかし、ふと「寝る前に自分の考えを思う存分楽しみたいな」と思った。でも枕元に携帯があれば、結局は携帯をいじることだろう。そこで携帯は別部屋で充電することとし、枕元に目覚まし時計をおくようにした。すると、読書量が飛躍的に増えた。

 ローレンツの高名な犬本と同じ名前をぶつけてくる辺り、随分挑戦的というかローレンツを越えてやるぜ、という気負いを感じる。と思ったら、そういう本ではなかった。学術論文として報告されているものと、そうでないものがごちゃ混ぜになっていて、筆者の展開する論は警戒しつつ読まねばならない。ホメロスの「イーリアス」を引用して犬の賢さを説かれてもな。それとも、人類学では普通の研究手法なんだろうか。

 ヒトとイヌの結びつきが如何に特別なものであるかは不思議だし面白いが、ヒトがイヌを如何に大切にしてきたかは眉唾で読む。犬との生活に関するフィールドワーク研究の本を読むと、情緒的な繋がりは勿論あるのだろうけど、それ以上に犬は生活資源としてシビアに扱われていたもんなあ。

犬からみた人類史

犬からみた人類史

  • 発売日: 2019/05/25
  • メディア: 単行本
 

 筆者の教養の豊かさ、長い研究者人生の振り返り、宮崎の山奥で猪犬を使って漁をしている人の話は面白い。古き良き時代という感じ。圧倒的なエビデンス量でバンバン攻めてくるというより、筆者自身の人生振り返りも含んだ「肩の力が抜けた」本だった。こういう「自分の研究人生を振り返る思い出語り本」は以前も遭遇したことがあるけど、ある種王道ジャンルなんだろうか。

  しかし、未だにイヌの起源はよくわからないことが多いのだな。そして私は地質時代区分表を読めない。多分慣れと基礎知識の不足が原因なんだろうけど、読めるようになりたい。

 

ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ (講談社選書メチエ)