「漂海民」羽原 又吉

 沖浦さんの本の中で「家船についてよくまとめられた本。(日本の家船がなくなりつつある現況では)これ以上の本は出て来ないだろう。」と紹介されていた本。初版は1963年でかなり古いので、どうだろうかと思って読んでみたら、沖浦さんの本より断然良かった。何が良いって、データ(文献やフィールドワークから得られた情報)から論理の飛躍がない。沖浦さんの本は、何故そのような考察になるのか理解できない(論拠からの飛躍がある)箇所がしばしばある。研究領域が異なると研究方法や思考のパラダイムが異なるので、「こういう考察の展開も『アリ』とされる領域なのかなあ」と思っていたが、この本を読んで、沖浦さんはかなりクセのある書き手だったとよくわかった。この後には宮本常一網野善彦を読んでみるつもりだし、読み比べてみるつもり。

 データからの飛躍が無いので、安心して読んでいられる。実直な本という印象。家船で暮らす人々の姿をより詳細に説明し、また日本の家船がどのように伝播していったかがわかるのは良かった。長崎県の外海地区や崎戸は、家船が藩に保護されて存在していたらしい。瀬戸内海の家船とは置かれた立場が随分異なるし、貧困と炭鉱のイメージしかなかった土地について、再度このような形で知ることができたのは嬉しい。崎戸町の資料館も行ったと思うんだけど、家船のことは全然覚えていない。また行きたいなあ。福岡県はの鐘ヶ崎も懐かしい。あそこは福津市だと思っていたが、宗像市に入っているのか。また行きたい。コロナ流行下で福岡ももう1年半行っていないので、憧れも切実。