カレル・チャペック「ダーシェンカ」

 動物愛護週間(9/20-26)にちなんで、近所の図書館で組まれていた特集コーナーで見つけた。チャペック、犬好きだったんだな。

 チャペックの愛犬が産んだ子犬(ダーシェンカ)がよそに貰われていくまでの観察記録と、子犬に向けて語るチャペックのおとぎ話が、チャペック自身のイラストと共に収録されている。子犬の成長過程の記述は、自分の体験と重ね合わせて楽しく読んだ。四肢の覚束ない動かし方と、次第に動かし方が巧みになっていく過程の記述が丁寧でいい。私はこんなに丁寧に見ていなかった。でも、目は開いたら見えてるかといえば、まだ見えていないような気がする。開いたばかりの子犬の眼って焦点がイマイチ合っていないよな。それから、開いたばかりの犬の目は不思議と青い。オモトの実のような青味がかった眼をしてると思っていたのだけど、ダーシェンカはそうでもなかったんだろうか?

 おとぎ話の項は、チャペックの語る話にダーシェンカがイマイチ興味なさげな感じがいい。何かをかじったり、別の物に興味が向いてしまったり、「そう、子犬ってこういうもんだよな」とつい微笑んでしまう。そして、チャペック自身も子犬のそういう様子を楽しんでいることが伝わってくる。犬が犬であることを受け入れている・楽しんでいる本は安心して楽しめる。また、ダーシェンカが別段可愛くもない、ボサボサの見た目の犬であることが凄くいい。その分飼い主(チャペック)の欲目(愛)が伝わってくる。

 惜しむらくは、この本の誤字脱字が多かったこと。私が気づいただけで2カ所あった。最近他の本でも誤字脱字のエンカウント率が高く、出版社の編集者がどうなってるのか心配になる。この本も青土社から出ているというのにこの仕上がり。出版業界、やっぱり大変で余裕がないのかしら。