「災害の襲うとき―カタストロフィの精神医学」

 大著、という言葉がピッタリのレビュー本。主に第二次世界大戦後〜1980年代中盤までの災害ストレスについてまとめている。初版は1989年刊行(原著の刊行は1986年)で、PTSDの概念すらまだ確立してない時期に出されているので、随分古い本ではある。しかし、コミュニティ全体が機能不全に陥るような甚大な災害に見舞われた時、人はどのように振舞うのか、どのような心性を抱くのか、そして社会はどのように反応し、あるいは回復していくのかに関しての知見は今でも十分に通用する内容である。ここ数か月、NHKの戦争証言アーカイブスをハマッて観ているのだけど、この本を読んでから戦争が証言者に残した影響、戦争について話せなかった(または話さなかった)ことが、どのような影響を与えたのかについて考えながら観られるようになり、番組への興味が2割増になった。

災害の襲うとき―カタストロフィの精神医学

災害の襲うとき―カタストロフィの精神医学

 PTSD研究の流れで今は更に新しい治療法や知見が出てきているだろうし、この本が出て今に至る20年の間にも災害に関する研究は続々と出ている。現在の研究の潮流に関する本も読みたくなった。