「点と線」松本清張

 通勤駅の構内にある図書コーナーで借りて(今更)初めて読んだ。こういう機会で出会わなければずっと読まずにいた本だと思うが、読みだしてみたら面白くて止められなくなってしまい、帰宅してからも読み続けて一気に全て読んでしまった。
 昭和30年代の風俗描写がいい。(今はなき)長距離列車で活気づく上野駅のホームの様子、有楽町は高架下の喫茶店の様子、香椎に箱崎、名島の様子、どれもありありと目に浮かんでくるようだ。知っている場所が出てくるのは懐かしく、そして当時の姿を知らない身には新鮮なイメージも併せ持って感じられる。和装の女性、男性の様相、家族の食事風景、結核で療養という出来事。なるほどこれが当時の「普通」の生活スタイルなのかと唸ったり感心したり。
 と、何が最も面白いと感じたのかを書き出していて、肝心の推理よりも当時の風俗描写に主たる興味と関心を取られていたことに気づく。松本清張に何だか申し訳ないような気持ち。

点と線

点と線