色気とは何か

 今夏、実家の犬に会った時のことを考えていた。

 犬を洗い、犬が好むブラッシングを一通り終え、数十分後に犬と再会した。その時、犬はしっとりと期待に満ちた目で私を見上げ、静かに尻尾を振っていた。で、それが何だか妙に色っぽかったのだ。「秋波を送る」とはこういうことを言うのか! と、驚き困惑したものだった。私は「普段の犬の生活にはないような」長時間散歩や珍しくて美味しいおやつの提供者なので、期待されるのは自然なことであるが、何というか期待の寄せ方の湿度が妙に高かった。

 まさか犬の仕草に色気を感じる瞬間があるとはねー、と思いながらネギを刻んでいて、ふと気がついた。犬の仕草に色気を感じていたのは私だ。すると、犬の色気を受信する機能を私が備えていたということになる。不惑の歳になっても未だに色気の発信方法はわからないが、色気の受信機能は装備しているらしい。人のも、犬のも。そもそも、犬は色気を発していたつもりはないかもしれない。すると、私は犬の行動のどこに色気を見出していたのか。その要素を知りたいところ。