竹野恭章・岡崎康洋 投げ銭ライヴ at café-bar gigi(福岡)

 他の楽器はそうでもないのだが、ギターに関しては好きな音がかなりはっきりとある。で、近年「この人の出すギターの音は好きだ」と自覚しているのは蝉の岡崎さんとムンズの竹野さん。
 今回、gigiの投げ銭ライヴはこの二人の競演だという。わー、行く行く! 開始時間遅いし、明日は5時起きの日だけど行くよ私は! 盆と正月が一遍に来たというか、トルコライスというか、カツカレーというか……とにかく、好物二つが一度に観られるイベントというので期待十分。しかも両者共にソロは観たことがないし、蝉といえば強烈な音圧が印象的なわけだがgigiのあの空間では普段のようにはいかないだろうしどうするのか? というので興味津々。
 混雑を予想して開演時刻30分前に到着するが、予想通り既にそろそろ満席の様相。流石。竹野さんは大声で「魚を捌くのなんかちんこを扱うより楽よ!」とか言っている。相変わらずやなあ。

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  • 一曲目の「セクシー」と歌う歌からいきなり真夜中感覚。真夜中の感覚というか、夜の深い時間がいつまでも続くような時間感覚の麻痺が生じてくる。まだ夜の9時なんだけど……。久しぶりだなあこの感じ。最初の歌が終わった後で竹野さん「下田逸郎が好き」と言っていた。何故か聞いたことがある名前だったのだが、何故自分がその名を知っていたのか不明。wikipediaで調べても、何故知っていたのか理由はわからなかった。
  • 岡崎さんはしきりに「歌いーよ!」と竹野さんに催促されていたが、『歌わん』『今は歌う時やない』と固辞。竹野さんの「もう40やぞ、恥ずかしがっとる場合か!」という言葉に『40だから惑わずや!』と切り返していて笑った。不惑
  • 岡崎さんが横笛を吹く場面があった。片足で立ちピュイーと吹き鳴らす姿に、笛吹き童子という言葉が脳裏をよぎったりよぎらなかったり。
  • 爆音じゃなくても岡崎ギターは岡崎ギターだった。
  • 竹野さん、ギターのコードを自分で押さえ、鳴らすのは隣に座っていた女子に要求する場面有。彼女がちょっと戸惑って弦の弾きが甘いと「ちゃんとやれー!」と注意していた。はははは。
  • ムンズの歌も歌っていた。今これを書いている今日は22日で、具体的にどの歌を歌っていたのかはっきり思い出せないのが残念。「カーセックス」「東京エッジ」くらいしか思い出せない。あと、スナックで知り合った女とセックスする歌は生臭いやら妙に切ないやらで印象的だった。この人の歌は薄汚れていて生臭いのに、どこか青さ切なさ汚れなさがあって、その混在ぶりが非常に魅力的。
  • 「東京エッジ」は町田か狛江か調布、あの辺の歌だった*1。歌の感触から、てっきり江戸川区の歌かと思ってたのに。なんだよ西の方かよ気取ってんなー、と思った私は元千葉県民津田沼育ち。
  • 竹野さんは歌詞を手書きで書いた紙*2を山盛り持参してきており、それを見ながら歌う歌を決めていた。
  • 普段「使わないから」という理由でしまってある一部の情感の蓋を開かれてしまい、涙だだもれ。何の曲の時だったか、岡崎さんが被せたギターの音に思いっきり揺さぶられて「やめてー! これ以上揺さぶられると収拾がつかなくなるからやめてー!」状態に。「パララとパンツと青い空」「朝」「その夜」「淡い夢」とか演られなくて良かった。特に「その夜」は岡崎さんがしきりに『演ろうよ、その夜だかあの夜だかっていう歌』と竹野さんに催促していたのだが、竹野さんは思い出せなかったのか気分が乗らなかったのか何なのか、ついに演らずじまいで助かった。危機一髪。

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 誰かをとても好きで丸ごと大事にしていたことや、丸ごと大事にされていると感じていたこと。そしてそう感じられることの充足感と幸福。今はそういう感覚を感じる瞬間というのは無くなっていて、もうどういう感じだったかすっかり忘れてしまっていたのだが、その忘れていた感覚を一気に(私の意志と関係なく)掘り起こされてしまい、今回とても動揺してしまった*3。こんなにも忘れていたとは。現在なんと私は色々なことを感じずに(雑に)暮らしているのかと思った。「毎日を丁寧に生きなさい。そのことが仕事に反映される」とよく言われていたのに、いつの間にやらこんながさつな暮らし方になってしまってなあ。そして、一度獲得された感覚や感情というのは無くなったわけではなくて、地獄の釜にしまわれているだけなのだな、と思ってちょっと気をつけようと思った。気づかぬうちに地獄の釜に色々なものをしまっているぞ自分。

*1:「すぐ隣は神奈川県」という一節から判明。

*2:大学の時のプリントの裏とか。ノートやプリントの端にちょこちょこ思いついたことや人の観察記録をつけていた自分の高校〜大学時代を思い出してしまった。

*3:この辺あまりに個人的な感想なので、ここに書いたものか大分迷ったのだが忘れたくないことで、書かないとまた全く忘れてしまうので書くことにした。