災害ボランティアに行ってみた

はじめに

 先々週からボランティアの受付が始まっていたことは知っていた。ところが集合場所が自宅から20km離れており、現在の道路渋滞を考えるとどうにも気が重い。被災時、大変な渋滞に巻き込まれた記憶が未だ生々しく、極力運転したくなかったし。しかし、一昨日日雇い仕事に広島市内まで出かけると、随分渋滞は緩和されていた。ほぼ平常時と同じくらいの所要時間で移動できるようになっている。これなら、ボランティア受付所までの道中もそう渋滞していないかもしれない。

受付所

 ボランティアの募集と人員配置は社会福祉協議会が行っている。現住地は複数の市町村が「平成の大合併」でできた市なので、合併前の社会福祉協議会が現住地の近隣に残っている。おまけに結構被害も大きかったところなので、仕事も十分にあるだろう。ここで受付をしてくれれば移動のロスが少なくて済むのに。ずっと不満だったのであるが、行ってみてわかった。ボランティアを受け入れるには相応の準備と人員が必要なため、各所分散してボランティアを受け入れることできないのだ。受け入れ側の仕事は、訪れたボランティアを必要な場所へ配置するだけだろうと思っていたが、実際行ってみるとかなり沢山の仕事があった。

  • ボランティア保険の受付
  • ボランティアの誘導と派遣までの準備
  • 装備が不十分なボランティアのチェック
  • 物品(長靴)の貸し出し、提供*1
  • ボランティアリーダーの設定と業務の説明
  • 派遣人数の決定と配置
  • 作業場所へのボランティア送迎
  • 作業場所から発せられるボランティアのヘルプ*2への応答
  • 帰還したボランティアの消毒*3
  • 帰還したボランティアからの報告を踏まえ、次回以降の作業の把握

 私が気づいただけでも、ボランティアを受け入れて送り出す側にはこれだけの作業や必要備品がある。なるほど、これなら一極集中して受付する方が断然良い。被災地の社会福祉協議会だけでは人員が足りないらしく、東北の市町村の名称が入ったビブス?を着ているスタッフがいた。応援に来ているのだろう。

作業場所

 派遣された場所は床下に土砂が流入した古い家だった。床上は被害なし。畳を上げてあり、縁の下がむき出しになっている。ここへ入って、流入した土砂を掻き出すのが今回の仕事だった。なるほど、この作業は重機で片づけるわけにいかない。しかし、畳(床上)が被害を受けていないのなら、土砂を掻き出して除去する必要はないような気もする。訊いてみると、このようなケースで流入した土砂は下水交じりのことが多く不潔なので、除去した上で消毒しないとかなりまずいらしい。また、実際掘ってみると災害から二週間以上経っているのに土砂は水分をじっとり含み、掘り出すと水が滴っていた。なるほど、これは不潔でなかったとしても放置すれば湿気で病気になるし、家も腐ってしまうだろう。
 しかし、古い和風の家があんなに簡素な作りだったとは初めて知った。昔ながらの重い畳を上げたら下は基礎も何もないただの土。よく「縁の下に犬猫が潜り込んで……」という話を昔は聞いたものだが、縁の下があんなに広々とした空間だったとは知らなかった。そして、家を支える柱のなんと少ないこと! こんなんでよく建ってるものだな家、そりゃあ地震が来たら潰れるわけだわ、むしろよくちょっとした地震では潰れないものだな、とか何だか色々考える。そして、作業開始前しきりに「作業先の写真を撮らないで下さい!」と念を押されていた理由がほんのりわかったような気がする。撮りたくなる人はなるだろうな。

熱中症

 ボランティアリーダーから「7-8分働いたら休憩を取ります」と説明があった。屋内だし、扇風機も回してもらっているし、もう少し働く時間を取っても大丈夫なんじゃないかと思ったが甘かった。シャベルで泥を掻き出してバケツに詰めるだけの作業なのに、あっという間に汗が噴き出してくる。ちょっと頑張ったら、もう肩で息をするほど息が上がってしまう。そりゃあ最近の私は大変な運動不足だし、箸より重たい物は持たない暮らしだけども、こんなにしんどいとは……。持参したぬるい水をちびちび飲んで水分補給。作業先から差し入れでアイスを貰う。何気なく食べて、驚くほど元気になった。体の中から冷やすことが、こんなに効果があるとは知らなかった。

終わりに

 リーダーの優れた采配で、熱中症の兆候も出ず元気に作業終了。送迎バスでボランティア受付場所まで送ってもらうと、一斉に長靴消毒、特設の流しでうがい手洗いを強制される。それだけ細菌感染のリスクは高いということなんだろう。無事終わった安堵感で一緒に作業した人たちと談笑していると、氷で冷やしたフェイスタオル、チェーン店の1000円食事券、うちわ、飲み物を貰えた。飲み物は別に要らないし、チェーン店もこういうことでもなければ行かないところだけど、貰えると単純に嬉しい。ボランティアに行く前の装備貸し出しに提供、帰還後のこの応対。ボランティアが気軽に来られるように、そしてまた来ようという気持ちになってもらえるようにという配慮をヒシヒシと感じた。

*1:マスク、手袋、飲料と塩飴までくれた。

*2:足りない物品の要請など

*3:破傷風を予防しよう!」という標語が至る所に出ていて怖かった。