2018西日本豪雨・その1

はじめに(これを書いているのは7/12)

 福岡は毎年大雨と冠水に見舞われる土地である。だから、私も何度も豪雨は経験している。が、広島に住んでいる今回初めて「あ、被災した」と思った。今はライフライン完備の自宅で過ごしている。周囲の都市はまだ断水していたり、家を失ったりしている状況なので、酷い被害を受けたわけではない私が「被災した」というのもおこがましいのだけど、それなりに衝撃があった。今回の体験を少し客観的に見られるようになってから書こうと思っていた。しかし、あまり整理が進まないので、体験を時系列で書き出していこうと思う。

災害の前

 昨日の夕方からひどく雨が降り出した。夕立かと思ったが、1時間経っても勢いが衰えないので早い店仕舞いを検討したほどだった。この雨は一晩中降り続いた。
 翌朝、本日の仕事は通常営業だと連絡が入る。福岡だったら休みになっているレベルだがな……。1時間ほどかけて広島市内へ移動。通常通り19:30に店仕舞い。一路家路を急いだ。

大渋滞

 広島市内の幹線道路は大渋滞していた。高速道路と有料道路を継いで帰宅しようとしたが、高速道路は既に封鎖されていた。幹線道路に戻る迂回路も大渋滞だったが、他に道はない。前が見えないほどの激しい土砂降りで、縁石にぶつかった事故車が止まっていたりして怖い。車は遅々として進まず、3.5kmの距離を20分かけて進んだ。
 22時を過ぎたが10kmくらいしか進めておらず、まだ広島市内を出られなかった。この辺で、「あれ? 私遭難しかかっているかも?」と自覚が芽生え始める。車中泊を検討し始めたのもこの頃。ホテルは取れるかどうかわからなかったし、車の運転をしながらホテルを探して予約することは到底無理に思えた。しかし、車を止めようにもあまり知らない土地なので、この辺が冠水する危険がある場所なのかわからない。

  • 冠水の危険が少ない*1
  • きちんと止められる駐車場がある場所

を探して運転することになる。情報がとても欲しかったが、ネットは繋がっていない。そして、ラジオは意外に駄目だった。通常番組を流しており、常に大雨と道路の情報は番組の合間にしか流れない。テレビは文字でも音声でも大雨情報を流しており、初めて車内でTVを流した。それでも、地区の細かい情報は流れないので、やはり移動はある種賭けのようなところがあった。

家に帰れない

 車はノロノロと進み、どこに留めたら良いのか決断がつかないまま有料道路に繋がるバイパスまでやってきた。ここなら少し標高が高いので冠水の心配はなさそう。渋滞ながらも何とか進んでいた車列はほとんど動かなくなった。雨が少し小降りになったので窓を開けてみると、坂を早瀬のように水が流れていく。その水は茶色く、あちこちに枯れた葉っぱが堆積している。水が茶色いのって土砂崩れが起き始めているということでは……。その「土砂崩れが起きているかもしれない」先に向かって、ひっきりなしに消防車やパトカー、救急車、果ては人員輸送車までが進んでいく。この辺りにあるコンビニの駐車場で休もうと思っていたのだが、コンビニの駐車場は既に満杯。時刻は午前3時に近くなり、疲労の限界だった。片側二車線(計四車線)の路肩に車を停め、車中泊の態勢に入った。この日、私はよりによってタイトスカートだったので、物凄く寝づらかった。火急の事態にすぐ対応することを考えると、バックシートに移動する気にもなれず、運転席を倒してそのまま寝た。土砂崩れや車両事故の不安はあったが、この先は通行止めになっていて進めないと言うし*2疲労もピークだったので、寝るより他なかった。近くに避難所がないだろうかと思ったが、探す手段がなかった。

*1:私は冠水のリスクにとても敏感だったが、これは福岡時代の経験が影響しているのだなと後から思った。

*2:大雨の中を警官?が立っていて、交通整理をしていた。