自転車に乗りたい in 島根県益田市

 今年は想定していた以上に忙しくなり、日曜すら殆ど家で過ごせない状態になっている。帰宅してからも仕事、遊びに行きたいような企画があっても仕事優先で後回し。そんな生活をしていたら、「何のために生きるのか」とか、哲学的な命題が頭を回り始めたので、ちょっと仕事を頑張って片づけて輪行することにした。目標地は島根県益田市、一日中自転車を乗り回す予定。

美都町

 何も目的なしにぶらつくのも飽きてしまうので、益田市内の道の駅、サンエイト美都を目標地点に定めて出発。益田駅からの距離は22km、国道191号線は「自転車乗りにはとても走りやすい道」という評判だったが、山道を走り慣れていない自分が走るにはどうだろうか?

自転車に乗り、自分の悲観性について考える

 前評判通り、国道191号線はとても走りやすかった。たっぷり幅のある2車線道路、元旦の佐伯並みの通行量の少なさ*1、トンネル内にもちゃんと歩道が用意されている。あまりに車と合わないので「人住んでるのか?」「(コンビニの表示を見かけて)人来るのか? 狸が経営しているんじゃないか?」と思ったりする。心配していた山道ぶりだが、思ったよりも急斜面は少なく、緩やかな長い上り下りが何度も続く道だった。上り坂をフウフウ言いながら登った後、下り坂を走り下りる。その際「帰りはこの長い坂を登るのか……」と必ず考えて少し憂鬱になってしまうのだった。行きの登り坂は帰りには下り坂になるのだから、結局プラマイゼロじゃないか。帰りのことを考えて憂鬱になるよりも、今体験している下り坂を楽しめばいいじゃない? とも思うのだが、なかなかそのように考えられない。要らん考え事する性質だな自分、と考える。
 温泉に浸かり*2昼食を取り、温泉みやげに加えて砂糖や日用品も売っているお土産売り場を眺めて、さっさと帰路。行きが90分かかっていたので帰りも同じくらいかかると予想していたのだが、すいすいと進む自転車。あっさり60分かからない程度で戻ってきてしまう。往復共にほぼ無風だったので、行きは道全般緩やかな上りになっていたのかもしれない。楽にあっさり帰ってきてしまったので呆気にとられる。

サンエイト美都というところ

 道の駅といえば地場産の生鮮食品が沢山販売されていて、地元民で賑わっていて……というイメージでいたのだが、ここは地元特産品を使った加工食品の販売*3が主で、生鮮食品の取り扱いは殆どなかった。12時頃入ったのに、本日の日替わりランチは既に終了。何だか薄暗いし、団塊の世代と思しき老年達ばかり結構入っていたが、昭和のこじんまりしたドライヴインのような佇まいで、私にはあまり魅力がなかった。

鳥羽一郎vs加山雄三

 予想以上に早く益田市内に入ってしまったので、海を観に行くことにする。
 多分山陰の海を間近で見るのは初めてのことだと思う。晴れて風もない穏やかな天気だったのに、波は荒かった。私にとって海といえば太平洋の遠浅の海辺なので、大きな音を立て波しぶきをあげ、寄せては返す眼前の海は、台風一過の後のように見えた。実際は昨日も今日も穏やかな天気だったので、この海はこれが普通の姿なんだろう。こんな波にさらわれたら、あっという間にゴロゴロ転がされて沖まで連れて行かれるんだろう。と思ったら、波の間から岩が見えた。波にさらわれたら、転がされる上に岩でゴリゴリ削られるのか。恐ろしいぜ日本海。荒々しい雰囲気にすっかり飲まれてしまい、無言で海を眺めるワタクシ。
 この風景を見ていると、加山雄三の「海 その愛」は太平洋側の海を見てできた歌なんだろうなあと思う。「海よ "俺の"海よ」なんて、この猛々しさを前にしたら、おこがましくてとてもそんな風に歌えない。と同時に、鳥羽一郎の「兄弟船」は日本海を見て出来た歌なんだろうと思った。「波の谷間に命の船が2つ並んで咲いている」という描写が実にしっくりくる。
 初めて「兄弟船」の情感を実感できたと思ったら、ちょっと感激する。演歌の世界を知るなら日本海を見るべし。

海 その愛

海 その愛

鳥羽一郎 ベスト CRC-1602

鳥羽一郎 ベスト CRC-1602

*1:午後の帰り道は少し車が増えたので、車が少なかったのは日曜の午前中だったからなのかもしれない。それでも大型車とは会わなかったので大変走りやすかった。

*2:美都温泉。加水しているのか加熱しているのか、熱過ぎずぬる過ぎず、適温で長湯したくなる温泉だった。

*3:ゆずの加工品が多かった。変わったところではワサビ焼酎なんて品もあった。