選挙に大勝利した民主党は公務員の削減も謳っていたはずだが、やはり交番も減らされるのか?

 日没頃、自転車で買い出しに出かけると、駅前でシルバーカーを押したおばあちゃんに呼び止められる。
「山田(仮名)の交差点へは、どう行ったら良いですか?」
山田の交差点は名前を知っているし、たまに通るのでこの付近であることはわかるが、はっきりした場所を咄嗟に思い出せない。私も困ってしまい、交差点近くの何処へ行きたいのか尋ね返すと、半ばキレ気味に婆ちゃんは言った。
「自分の家たい!」
 うわっ、この人もしかして認知症か!? と内心焦るが、その後のやり取りでそうではないことが判明。この人は数年前から遠方の高齢者マンションに住んでいるが、今回私用で一時的に戻ってきた。ところが、駅前再開発で地形が大幅に変わってしまったために道がわからなくなってしまったとのこと。確かにここ数年間でここの駅前は古い建物が一掃され、宅地開発と道路拡張が進んで風景が一変したからねえ。しかし「何処へ行きたいのですか?」という問いに対し、高齢者からイラつき気味に「自分の家」と返答されると本気で認知症を疑うので、もう少し穏やかな返答を用意しておいて欲しいと思った。自分が同じ状況になった時は気をつけよう。
 駅員とタクシーの運ちゃんに道を訊いて交差点の場所を思い出した私、自転車を押しておばあちゃんを目的地まで案内することにする。おばあちゃんは「道は変わるし、知った店もないし、交番もない。何処へ行ったらいいのかわからん、車がないと何処へも行けん。『昔に戻して』って言うごたる」とブチブチ文句垂れっぱなしだった。まあこんなに変わってしまっては無理もないだろう。この辺りは交番もなくなってしまったし、携帯電話も持たない様子であった彼女は、自分が慣れ親しんだ「道に迷った時に道案内を得る方法」がなくて困ったことだろう。「タクシーを使ってはどうですか?」とも提案してみたが、「自分ちに帰るのに、どうしてタクシーを使う必要があるね!?」と怒られて終了。まあ確かにこの世代*1にとっては、タクシーは贅沢品だろうしな。
 歩道と車道のちょっとした段差にシルバーカーを躓かせては「よいしょ」と操作する様子*2、相当歩いたのか汗と皮脂で顔がテカテカしている様子。交差点に着いて「お礼が何もないから握手しましょう」と握手して別れた時の、家事をしなくなった高齢者独特の手の柔らかさ、握った途端にポキリと鳴った関節の感触。バリアフリーとか言って色々為されているけれど、まだまだ改善の余地は多いのだなとか、気をつけて帰って下さいよとか、何だか色々と考えたり感じたりさせられる。私が彼女と同じ歳になる頃、私は、周囲の環境は、どんな風になっているだろうか。

*1:80代だと言っていた。

*2:歩道は点字ブロックやらちょっとした傾きやらにシルバーカーの車輪をとられて歩きにくそうだった。