芋ロックと音楽の夕べ ―黒崎オンマンマイン―(百々和宏とテープエコーズ、the Camps) at marcus(黒崎)

黒崎というところ

 デルソルに2回ほど行った時に黒崎駅を利用しているはずなのだが、黒崎駅からデルソルまでどうやって行ったのかとんと記憶がない。だから、これが黒崎の街初歩きのような気がする。黒崎駅前は巨大な歩道橋があり、駅に面した大通りには横断歩道がないので道を渡るには結構不便。小倉駅もそうだけど、何故こんな造りにしたんだろう。黒崎と小倉、どちらも物騒なところだと聞いたことがある*1。駅前のロータリーを歩いていて、人攫いの車に狙われる被害を防ぐためなのかしら……と少し考える。
 駅ビルは大手チェーン店が幾つも入っていたが、橋を渡った先にある昔ながらの商店街はほぼシャッターストリートだった。こりゃあ帰りはこの中通っては帰れないぞ。商店街のメインストリートから伸びる細い道には飲み屋や風俗店が並んでいたが、今日が日曜だったせいかこちらも営業している気配が殆どなく、さみしい限り。

マーカスというところ

 意外や二階にあるお店だった。チラシやステッカーがべたべたに貼られた汚い階段が素敵だった。そして小さいライブハウスには珍しいことに、ここは再入場不可だった。コインロッカーもないので、次に来る機会があったら、荷物は全部黒崎駅のロッカーに突っ込んでから来ることにしよう。中は割とこじんまりしており、ステージのほぼ真正面に大黒柱が立っている。その造りに、渋谷クアトロをちょっと思い出したりする。気になったのはトイレ。フロアにプレハブの箱が置いてあるような格好でトイレがある。もしかして簡易トイレを置いているんだろうか、あれ。

The Camps

 ステージの幕が開いたと思ったら、押入れに数か月しまっていたような巨漢がデンと鎮座ましましていたのでちょっと呆然。前座の存在をすっかり忘れていて、百々が出てくると思っていたところに巨漢登場だったので余計に呆然。ちょっとポカーンとしてしまった。音は何だか華のないサンボマスターという感じで……。ボーカルの人*2の歯ぐきが気になってそればかり見ていた。

百々和宏とテープエコーズ

 最初は百々ソロ。「カゼマチ」「アトサキ」、それからニッキ(肉桂)が出てくる歌。肉桂が出てくる曲では美和子さんという可愛らしい女の子がコンガ?を叩いて入っていた。「アトサキ」は私にとって涙腺が緩んでしまうキラーチューンなんだが、まだ体が温まっていなかったから平静に聞けた。危ないところだった。百々の解説によると、この曲は3コードしか使っていないらしい。「ピストルズか!っていう……」とセルフツッコミする百々。でも良い曲。
 バンド編成になって、美和子さんとベースの人と3人で数曲演奏してから、満を持してアヒトイナザワ登場。待ってました! 観るのはナンバーガール時代以来だから、多分13年ぶりとかだと思う。少し横が大きくなったように思うが、光が溢れてくるようなドラミングは相変わらず。この人のドラムは明るくていい。
 バンド編成になってからは、明るいほのぼのした楽曲が続く。新しいアルバムの曲ってこんな感じなのか……。この編成で録音したわけではないと思うんだけど、何だか物凄く仲良さそうな、楽しげな空気が放出されていた。個人的にはピリッとしている方が好きなのだけど、人間関係良いんだろうなあと思わせられた。
 マーカスはモーサムにとって古巣に当たるためか、いつになくMCが多かったように思う*3。ソロ時の「帰ってきたぞー、黒崎ー!」から始まり、黒崎話やモーサム昔話、近況話も出てくる出てくる。特に印象的だった話は以下の通り。

  • 今回はPVを作る計画があり、撮影班*4を連れてきた。せっかくだからと黒崎の街中で撮影していたら「何しとうとや?」と話しかけてきたのは13歳のヤンキーだった。最後は仲良くなって「ちゃんと勉強しろよ」と言ったら良い返事だったので、2年後には立派なヤンキーになっていることだろうとのこと。うーん、英才教育……
  • 先ほど良い感じの飲み屋を見つけたのでライヴ前に入ってきたら、そこのトイレ便座にはうんこがべったり付いていたらしい。
  • ライヴ後の打ち上げがいつも凄くて、宿を取ってもホテルに帰ってくるのが朝方なので、チェックアウトまでの2時間程度しか寝られないらしい。宿取る意味あるのか?
  • モーサム昔話。当時から打ち上げは凄かったそうで、朝方まで飲んで、途中でトイレ休憩を入れつつ福岡まで帰っていたとのこと。「駄目だよー、飲酒運転」とは百々。
  • モーサム昔話その2。当時使っていた機材車のライトの調子が悪く、ガンガン蹴ってその衝撃で点灯させていた。その時もライトを点けようと蹴ったら、ライトを割ってしまった。
  • モーサム昔話その3。モーサムがマーカスのステージにしばしば上がっていた頃、他の出演者は不良のバンドばかりだった。で、負けたくなくて音を大きくするようPAに要求していたらしい。明け方まで打ち上げとか、コインパーキングのフラップ板踏み倒して帰ったとか、てっきりモーサムも不良だと思ったんだが、もっと不良だったのか周りは。
  • 近況。L'Arc-en-Cielのyukihiro(Dr)、凛として時雨の345(Vo, B)と一緒にgeek sleep sheepという名前で武道館に出たら、「ユキヒロ―!」「ミヨコー!」と客席から名前が呼ばれる中、自分だけ「ボーカルの人ー!」という掛け声で、名前呼んでもらえなかったらしい。
  • 近況その2。百々は向井秀徳と呑んだらしい「どうでした?」と訊くアヒトイナザワの表情が心配そうに見えた。

 MCにはよく笑ったけど、演奏はクールに見ていた。つもりだった。中島みゆきの「悪女」カバーをした時も、「こういう『ロックアレンジ施しました』的カバーってあんまり好きじゃないんだよなあ」位に思ってたのに、後半のどしゃめしゃなバンド演奏で気がついたら声あげてた。無意識のうちに演奏にほぐされていたっぽい。以前百々ソロを観た時も頑なになっていたココロを爆裂ギターに解されたような気がしたものだけど、今回もそんな感じ。ホント私ときたら万年リハビリ中やで……。
 ステージに上がってきた昔なじみのお調子者の客を小突いてみたり、「(バーカウンターのスタッフにビールの売れ行きを尋ねて)一人4本はビール買ってー!売上目標130本!*5」等、グダグダしたやりとりもありつつ、「ますますシャッターストリートになっとるね」「二度と来ない」と憎まれ口を叩き、そして「ありがとう黒崎」と感謝を伝える百々。実に古巣マーカスと黒崎に対する愛溢れるライヴだった。

窓

今回のライブで「額に爪楊枝を10本くらい刺すと酒の席が盛り上がるよ」と話しているのを見て、このアルバムジャケットでオデコにギターが突き刺さっているのはそこから来たのだな、と思った。
 最後に、うろ覚えセットリストを。
第一部:百々ソロ

  1. カゼマチ
  2. アトサキ
  3. 肉桂が出てくる歌(タイトル知らない)

第二部:テープエコーズ

  1. 唐変木ブギウギ
  2. ポテトフォーピープル
  3. ラク
  4. 天気雨
  5. なんだか愉快なぼくたちは
  6. お酒にまつわるエトセトラ
  7. 悪女(中島みゆき
  8. 高架下の幽霊〜セッション
  9. ロックンロールハート(イズヒアトゥステイ)

※テープエコーズ形態でアンコール2曲(うろ覚え)。

*1:もう10年近く前のことだが「小倉駅では話しかけられても絶対立ち止まるな」と先輩から薫陶を受けていた。迂闊に立ち止まった女子を攫うバンがいるんだとか。実際、この手の犯罪防止のためにパトカーがロータリーを周回して見廻っていることがニュースになっていた。

*2:多分この人が安増さんで、私は灰野敬二のライブの時に見ていると思う。その時はこんなに大柄で太っていた印象は無かったのだけど、太られたのかしら。

*3:数えるくらいしか彼らを観たことがないので実際のところはどうだかわからない。

*4:連れてこられた撮影班とは、なんとカンパニー松尾だった。初めて見た! 「百々をハメ撮りします!」と宣言して、ライヴ途中からずっとステージ上で撮影していた。

*5:130人くらい客が入ったらしい。