犬に関連する私の最近の心持ち

 私が犬を譲渡した団体は、譲渡1か月後、2か月後、半年後、1年後の犬の様子報告を義務付けていた。面倒臭いし絶対忘れるとわかっていたので、犬のインスタアカウントを立ち上げ、保護団体をフォローしている。相互フォローして、先方にいつでもチェックしてもらえるようにしとけばいいじゃん、という方策。反って面倒臭いことになった気もするが、譲渡から2年半経った今も未だ週1-2回は更新しているので、問題なかった。

 犬自体のことはそっちに記録することにしているので、私自身の犬に関連する心持ちはこっちに書く。以前からその書き分けは決めていたのだけど、書こうと思っては忘れて今に至る。

 犬を迎えて2年半経ち、最近明らかに私自身が変わったと思うのは、工場や廃墟や鄙びた路地に対する興味の減退である。明らかにトキメキが弱っている。(あれ、あんなに好きだったのに)と奮い立たせようとするが、なかなか立たない。代わりに県内の廃道や「険道酷道」と呼ばれる道を探してはワクワクしている。ここへ犬を連れて行ったら、犬は張り切るだろうとか、楽しい散歩になるだろうとか、云々。googleストリートビューで周辺検索をして、車を停められる場所を検討して、往復ではないルートで元の場所に戻ることはできるか*1とか、総距離はどのくらいになるかとか、色々検討したり実際に出かけたり。
 ……と書き連ねていると、自分の興味の変遷に、犬が大きな影響を及ぼしていることを感じる。あまりそのように感じたことはなかったが「彼氏ができると趣味が変わる女」っぽいな自分。一方で、廃墟や工場から廃道/険道/酷道への興味の以降って、本質的には変わっていないような気もする。人の姿がほとんどない、しかし人が関わった(造った)気配のするものが好きというか。

*1:往復しても良いが、違う道を歩く方が楽しい。

喪の作業が追いつかない

「懐深く、人柄が素晴らしい人」 鮎川誠さん死去に久留米の知人

毎日新聞

 ロックバンド「シーナ&ロケッツ」のギタリストでボーカルの鮎川誠(あゆかわ・まこと)さんが29日、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。74歳。(後略)

 高橋幸宏が亡くなって、トム・ヴァ―ラインが亡くなって、感情の整理が追いつかないと思っていたら何と鮎川誠まで! ちょっと立て続け過ぎて、自分一人では抱えきれなくなってタバタ先輩(福岡出身・福岡在住)に電話。入れ込み方の軽重はあれど、福岡の民にとって鮎川誠はヒーローである。亡くなっちゃいましたねえ、としみじみ話す。ロックの人は若い頃に無茶しているだろうから(平均寿命未満でも)仕方ないよね、とタバタ先輩。そう考えるとローリングストーンズはすごい。セックスドラッグロックンロールの権化で多分鮎川誠よりもっと無茶しているだろうに、まだメンバーの3/4は存命だ。もしかすると影武者を立てているのではないか。そういう気もしてくる。

 何にせよ、しみじみと寂しい。私も40代も半ばとなり、先輩達が少しずついなくなっていく、そういう年頃に差し掛かっているのだろうとも思うが、それでも寂しい。

 

トム・ヴァ―ライン逝去

トム・バーレイン氏死去 米ミュージシャン

共同通信

 トム・バーレイン氏(米バンド「テレビジョン」のボーカル、ギタリスト)米メディアによると28日、ニューヨークで死去、73歳。ここ最近は病を患っていたとされるが、詳しい死因は明らかにされていない。(後略)

 先日は高橋幸宏の訃報が発表されたし、自分の中で大きいウェイトを占めているミュージシャンの訃報が続いて心の動揺が収まらない。もう少しゆっくり時間が動いてくれないかなあ。私が追いつかない。

 

犬ってね……

 私の犬が休んでいるところに近づいて行って頭を撫でると、犬は自分の頭に伸びる手の元、すなわち私の手首に鼻を当ててにおいを嗅いでいる。皮膚に触れる鼻は最初冷たくて、その後生温かい。

 イヌってこんなんだったかなあ、と思う。

 撫でられたらもっと違う反応をする生き物だったような気がするのだけど、最早私の犬に私が特化してしまっていて、もう思い出せない。私の犬は今の生活に慣れて行って今のようになった。飼い主である私も、私の犬に慣れて行って今のようになった。こうして私達はますます「互いに対して最適化した対象」になっていくのだろう。

 どこが「犬あるある」な行動で、どこが犬の個体差なのかはよくわからない。しかし、違うことはわかる。自分の犬について説明することはできるけど、犬の個体差が把握できていないから、犬全般について語るなんて、とてもできない。犬でこれなのだから、(よく見かける)自分の子育てを踏まえて子育ての助言をすることの無謀さと愚かさを思う。

犬イベント参加まとめ

 今秋はコロナの流行が少し落ち着いていたので、様々な犬イベントが開催された。犬の社会化に役立つ期待もあり、色々行った。10月はほぼ毎週犬イベントに行っていた気がする。私が行った犬イベントは地域町おこしや業者主催のものが多かったのだけど、色々行って、色々思うことがあったので箇条書きでメモ。

  • やって来る犬はほぼ9割小型犬。見た目で犬種の想像が容易につく感じの犬ばかり。残り1割の7分が中型犬、3分が大型犬という感じ。でもやはり犬種が容易に推測できる感じで、中型犬は短頭種とキャバリア、それから柴が少し。
  • ウチの犬(中型犬)のような「何が入っているのか全然わからない」ザ・雑種という犬はかなり珍しかった。保護犬は怖がりの犬が多いので、こういうところには出てこないというのもあるのだろうけど、保護犬の飼い主達はどこにいるんだろうか、と思ってしまう*1
  • 早食い競争に参加したら、ウチの犬以外の参加犬は全てフレンチブルドッグ*2になったことがある。それだけでも結構シュールなのに、早食い課題のアバラ骨ジャーキーをボリボリ食べていたのはウチの犬だけで、他の犬は舐めるか口にも入れず、ますますシュールだった。もしかすると、不正咬合*3のために堅い物を噛むのが難しいのかもしれない。
  • 僻地の犬イベントで保護犬譲渡コーナーを設けるのはあまり良い方策ではないな、と思う。私が行ったイベントでは全然来場がなくて、見ていて辛かった。犬オーナー以外も来るようなイベントや、街中で開催されるイベントの方が興味を持ってやって来る人が多いのではないかと思う。でも「二頭目は保護犬を」とかいう犬オーナーも来たりする可能性があったりするんだろうか。どういう戦略で譲渡コーナーを設けているのか、譲渡スタッフ達がどういう体験をしているのか、傍から見ていると興味深い。

*1:そういえば柴犬も(飼育頭数の割に)全然見かけなかった。犬イベント来場者というのは犬飼育者の中でも極端な部類の人達なんだろうか。

*2:多分申し合わせて、イベント参加を兼ねたフレブルオフ会を行っていたのでは、と思う。

*3:短頭種の犬は下顎が出ている。

しまえしまえ

 中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は65メートルという、スケールの大きい台風が近づいている。猛烈な風の強さに、故郷の3年前の台風被害のことを思い出した。

https://hamahn.hatenablog.jp/entry/2019/09/13/000000

 これは危険だ、ということで、朝からせっせと買い出しに行き、窓という窓に養生テープを貼り、自転車を屋内に入れ、雨が降り出す前に犬を散歩に連れて行って排泄させる。明日は丸一日家から出られないかもしれないから。

 散歩からの帰り道、周囲の家を見てみると窓に養生テープを貼っているのは我が家くらいで、それどころか洗濯グッズや植木鉢を家の中に入れていない家も結構ある。大丈夫か。自分の家の物が飛んで他の家の窓を割った場合、弁償を求められるという話を聞いたことがあるのだけど、最近はそうでもないんだろうか。そうであったとしても御近所と不愉快なやり取りをすることは避けたいので私はしまうけど。

 暴風の被害は3年前の故郷のこともあるし、福岡在住時代に1991年の台風による暴風被害の話を聞いているので*1、かなり警戒している。ホントは段ボールやプラ板を窓の内側から貼れると良いらしいのだけど、今ダンボールが手元にないのでそれはできなかった。あと、窓という窓に養生テープを貼ると、それだけで5巻はテープを使う。次回同じことがあった時のために載せておく。

*1:神社の巨木群が倒されたとか、家の窓が割れてコタツの天板で穴を塞いで一夜を明かしたとか。

カレル・チャペック「ダーシェンカ」

 動物愛護週間(9/20-26)にちなんで、近所の図書館で組まれていた特集コーナーで見つけた。チャペック、犬好きだったんだな。

 チャペックの愛犬が産んだ子犬(ダーシェンカ)がよそに貰われていくまでの観察記録と、子犬に向けて語るチャペックのおとぎ話が、チャペック自身のイラストと共に収録されている。子犬の成長過程の記述は、自分の体験と重ね合わせて楽しく読んだ。四肢の覚束ない動かし方と、次第に動かし方が巧みになっていく過程の記述が丁寧でいい。私はこんなに丁寧に見ていなかった。でも、目は開いたら見えてるかといえば、まだ見えていないような気がする。開いたばかりの子犬の眼って焦点がイマイチ合っていないよな。それから、開いたばかりの犬の目は不思議と青い。オモトの実のような青味がかった眼をしてると思っていたのだけど、ダーシェンカはそうでもなかったんだろうか?

 おとぎ話の項は、チャペックの語る話にダーシェンカがイマイチ興味なさげな感じがいい。何かをかじったり、別の物に興味が向いてしまったり、「そう、子犬ってこういうもんだよな」とつい微笑んでしまう。そして、チャペック自身も子犬のそういう様子を楽しんでいることが伝わってくる。犬が犬であることを受け入れている・楽しんでいる本は安心して楽しめる。また、ダーシェンカが別段可愛くもない、ボサボサの見た目の犬であることが凄くいい。その分飼い主(チャペック)の欲目(愛)が伝わってくる。

 惜しむらくは、この本の誤字脱字が多かったこと。私が気づいただけで2カ所あった。最近他の本でも誤字脱字のエンカウント率が高く、出版社の編集者がどうなってるのか心配になる。この本も青土社から出ているというのにこの仕上がり。出版業界、やっぱり大変で余裕がないのかしら。