ビサイド・ボウイ ― ミック・ロンソンの軌跡 ―

 動画配信サイトで観賞。ジギー・スターダストだった頃のボウイのバンド、The Spiders from Marsのギタリストだったミック・ロンソンのドキュメンタリー。振り返れば、2017年の年末に新宿で「Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」のリバイバル上映も観ている。全然熱心なボウイフォロワーじゃないし自覚もなかったが、Ziggy Stardust and the Spiders from Marsは好きなのだな。

 多分「そういう作り」を意識して作られているのだと思うが、名を挙げることに対するボウイの努力やあざとさ、ミックロンソンの素朴さが対照的だった。一番笑ったのは、ルー・リードのロンソン評とロンソンのリード評。ルー・リードが「ロンソンはハル(ロンソンの出身地)訛りがひどくて、5回は聞かないと何を言っているのかわからなかった」と言うのは如何にも彼らしい。そしてロンソンの「ルーはチューニングが適当だった*1。それに『そこはグレーなイメージで』とかリクエストしてくるのは、何を言っているのか全然わからなかった」という評もいかにもルー・リードっぽいスノッブさである。そして、それに付き合わない感じがロンソンの職人気質を伺わせた。

 二人は人間的にあんまり合わなかっただろうなあと思わせる話だが、それでも「perfect day」の終奏は相変わらず美しかった。この時、ルー・リードが各パートのボリュームを上げ下げして音をよく聞かせるのが凄く良かった。涙腺が緩む。

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

  • アーティスト:REED, LOU
  • 発売日: 2003/01/06
  • メディア: CD
 

  ミック・ロンソンについてのドキュメンタリーと説明されているが、主軸になるのは一貫してボウイとの関わりだった。彼のソロ作についてのピックアップは殆どなく、二作目の「Play don't worry」については触れさえされなかったし。まあタイトルが「Beside Bowie」だし、Bowieを軸に据えてこそのこの映画だということなんだろう。しかし、その分Ziggy Stardust and the Spiders from Marsの場面は実に良かった。バンドが乗っている時に見られる「魔法」が堪能できるし、色気に溢れて光り輝いている。「良いバンドには良いコンビが存在するものさ」くらいの説明でミック・ロンソンはあっさり流しているが、その言葉では表現しきれない「魔法の瞬間」が見られる。

 あと良かったのはボウイの元妻アンジー。「Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」で「ダーリン♪」と言いながら楽屋に入ってきた快活な女性の、およそ40年後の姿を見られるのはなかなか興味深い物があった。話し方に凄く勢いがあってつい引き込まれる。当時はもっと凄かったんだろう、それともあまり変わらないのかしら。見ているとこちらもエネルギーを吹き込まれる感じだった。

ビサイド・ボウイ~ミック・ロンソンの軌跡~ [DVD]
 

 

 

*1:でも、チューニングがズレていることを指摘するとちゃんと直していたらしい。意外と素直……。