セラピードッグってなんだ・3

 犬の訓練所へ、犬飼養の相談へ行く。この1年は、保護犬を飼ってセラピードッグに仕立て上げたいという希望を実現させる準備の1年だったと言っても過言ではない。しかし、保護犬という提案をすると何処も良い顔をしない。以前相談に行った訓練所は物腰柔らかく門前払いだったしな。今回も同じ結果になるかもしれないし、そうなったら計画全体を練り直す必要があるだろう。不安と緊張を交えつつ向かった。

 今回の訓練所は、県道から脇道にずんずんと入った先にあった。到着して車を止めると、犬の鳴き声がする。インターホン鳴らすまで、一切犬の鳴き声がしなかった前の訓練所と比べると、もう少し緩い感じなのかもしれない。ガタイの良い女性が対応してくれる。私の希望を伝えると、やはり保護犬は難しいと言う。色々説明してくれた。

  • 野生で生き延びる可能性が高い犬は、慎重で臆病な犬
  • 臆病な犬同士が掛け合わせて生まれた子犬は、やはり臆病な性質を受け継いでいる
  • 子犬を引き取り、犬が成長するにつれて(臆病さや神経質さ故の)問題が起きて訓練所に連れて来られるケースは多い
  • 臆病さや神経質さは性質なので変えられない。訓練で問題行動を改善することはできるが、持って生まれた性質の影響は大きい。
  • 希望に叶うのは、性格が固まった成犬が良いだろう。それで性格を見極めて引き取ること。2歳くらいまでは周囲の影響を受けやすい。勿論、訓練を入れるならあまり歳を取り過ぎているのも難しい。

 成犬を勧められて、何だかとてもホッとした。保護犬というだけで嫌がられたり、可哀想な犬に一時的に感情移入して盛り上がっているだけと思われたり、まあ何か色々不快な目には遭ったもんなあ。そして引き取る犬の目安としては以下のようなことを言われる。

  • セラピーに向くのは、ボーッとした犬
  • 初対面でも人を怖がらない。おやつを手から食べられるか。
  • 尾を水平くらいの高さで、ゆっくり振る犬が良い。尾を高く上げたり、激しく振る犬は避ける。尾を高く上げるのは自分の偉容を誇示するためであり、競争心が強い。また、激しく尾を振るのも興奮しやすさを示すので望ましくない。
  • すぐに腹を見せる犬も避ける。臆病さの表れであることがあり、慣れてくると内弁慶になる可能性がある。
 ほうほうほう、とメモを取りながら、実家の犬はセラピー向きだったんだな……としみじみ思う。子犬の頃から妙に落ち着いていてテンションが低い犬だったもんな。今も昔も、唸ったところや歯を剥いたところを見たことがないし。

 自分が希望する方向性で良いのだという安心感を得て、最初の緊張は随分緩んだ。子育て相談に来て「それで良いんですよ」と言われて安心する母親の気持ちがちょっとわかったような気がする。このまま、自分の思っている計画の通りに準備を進められる。

 帰り道はやっぱり細かった。私は裏口から来てしまったのではと思っていたが、やはりこの道しか入る道はないようだった。この細道は車の離合不可能な細さで、久しぶりに教習所のクランクを思い出したレベル。対応は好印象だったけど、ここの訓練所に通うなら、この道を毎回通らなければならないのかと思うと気が重い。絶対いつかこすると思う。