老親と大型犬

 今回の帰省直前、犬がマムシに咬まれたという話は聞いていた。最初からマムシに咬まれたとわかったわけではなくて、犬が藪に入って出てきたら、みるみるうちに脚が腫れて、歩けなくなってしまったのだという。大型犬を自力で連れ帰ることはできず、車を出して犬を回収し、事なきを得たらしい。その後数日して受診し、マムシに咬まれたとわかった。咬まれた時に犬は鳴かなかったし、マムシも姿を現さなかったそうで、何が起こったのかわからなかったらしい。父は気まずいのかこの話の詳細を私に一切しなかったので、以上は母から聞いた話。

 どうしてすぐ獣医に連れて行かなかったのだろうと思っていたが、帰省して犬の様子を見て、何となくわかったような気がした。多分犬のケアをするには、父の力が落ちているのだ。犬が繋がれている周辺は犬の抜け毛があちこちに落ちており、暑い時間帯に犬が繋がれる「避暑地」も、犬の毛とゴミが混じって落ちていて汚らしかった。散歩に連れて行き、餌を与えるだけで今の父には手一杯なのだろう。散歩も腰の調子が悪いと連れて行かないと聞いているし、酔って寝てしまって餌をやり損ねている姿も今回の帰省時に見たので、これらの基本的な事柄も覚束なくなっているのかもしれない。犬も餌の要求をしていなかったので、もしかすると餌のやり忘れも度々あるのかも。

 父は「犬がいなくなったら、もう散歩には行かない」と言っている。老年期の運動量確保は非常に重要なので、散歩には行って欲しいところ。犬も相変わらず父を慕っており、父の姿を見ると明らかにウキウキしている。父が犬のケアをしきれなくなったら、私が犬を引き取るつもりでいるけれど、今のように「明らかに持て余しているが彼なりに犬を可愛がっており、手放す気もない」時点ではどうしたら良いものか迷う。もっと小さい犬にするとケアは楽になると思うが、「犬を飼いきれなくなった俺」という事態に父が落ち込んで活動性が落ちそう。また、今から新しい犬を飼い始めてもその犬のケアも十分にできるとは限らない可能性もあるしなあ。今の事態を客観的に捉えると、父のQOLのため、犬が我慢を強いられている状況だといえるだろう。動物好きの同僚から「それは虐待でしょ!?」と指摘されると、そうかもしれないと思うが、ではどうしたら良いのか対応に戸惑う。