実家の犬

 午前中の高速バスで実家へ向かう。今回の帰省では実家の犬に会うことを楽しみにしていた。大人しい、もっさりとした犬は以前会った時よりも少し大きくなっていたが、相変わらず私を見ても無言で、拳を近づけると静かに拳を舐めた。
 若い未去勢の雄犬なので、力も有り余っているだろうと早速散歩に連れ出す。物凄く引っ張られながら、家の周囲6kmをウロウロ。海にも行った。この犬が不思議なのは、他の犬に吠えられても全く動じないこと。そして猫に異様な執着を見せること。母猫に連れられた子猫に会った時は腕が抜けるかと思ったし、点滅する横断歩道を渡ろうと軽く走ったら猛烈にダッシュされて転ぶかと思った。一応犬なりに手加減してくれているのね……。
 陸橋の上を歩いていると、しきりに立ち止まっては立ち上がり、柵の外をじっと眺めていた。その人間臭い姿が可愛くて仕方なかった。