「洗礼」楳図かずお

 私が漫画を読み始めたごくごく最初の頃に読んでいた漫画は、大方が楳図かずおの短編だった*1。父がホラー漫画好きで、楳図かずおのホラー漫画ばかり買ってきていたのをそのまま一緒に読んでいたのだ*2
 「洗礼」を初めて読んだのも、父が買ってきたからだった。母親の逃れ難さは何となく覚えていたものの、そもそもどういう話だったっけ? 結末どうなったんだっけ? と気になったのが今回の読み直しのきっかけ。で、およそ20年ぶりに読んでみたのだけど……母娘の関係の抜き差しならなさ、娘の葛藤は頭では理解できるのだけど、肌感覚として「理解できる」感じは子どもの頃読んだ時より弱くなってしまったような気がする。むしろ、お母さんたら一体何日土に埋まって生きてんだとか、そういう瑣末なところが気になってしまって仕方なかった。些細な現実検討のところに囚われてしまって、話の一番大事な部分をしっかり把握しきれないのって、物凄くつまらないことだよなあ。肌感覚として理解できなくなっている自分に何だかガッカリ。

洗礼 (1) (小学館文庫)

洗礼 (1) (小学館文庫)

*1:記憶の中で『生まれて初めて読んだ』漫画は小林よしのりの「東大一直線」。

*2:この頃に「私は真悟」を読んでいたら、多分脳に焼きつくような衝撃を受けていただろうと思うけど、父の嗜好は短編ホラーにのみ偏っていたため、かの本には会わなかった。これと「漂流教室」を中学生までに読めなかったことはつくづく悔やまれる。