呆けすとら歌舞音曲スペクタクルショウ2007(出演:ドグラマグラ、倉地久美夫、呆けすとら(含ミステリアスケイト)) at FUSE(小倉・北九州)

 今回北Qまで来たメインの目的はこちら。今年は月曜開催ということで、次の日がキツいし*1今年は見送ろうと思っていたのだが、倉地さん出演と聞いて腰が上がる。呆けすとら歌舞音曲スペクタクルショウといえばワサワサ来る子どもたち。子どもたちが倉地さんにどんな反応をするかしら? 観たい!

開演前

 一昨年初めて行った時と同じライヴハウス。このライヴハウスは改築したらしいので、あの時凄く邪魔だった壁を壊してくれてたらいいなと思っていたのだが、壊してなかった。しかしドリンクブース近くに出入り口を作ったので、人の流れが凄く楽になった印象*2。ライヴ前に買い物した荷物を持ったままだったので、コインロッカーがあったのも助かった。隣の人から「狭くなりましたよね」と話しかけられて、そういえば今ステージの場所が以前は出入り口だったことを思い出す。
 そして、子どもたち。開場時、ライヴハウス入り口に貼ってあるヴィジュアル系バンドのポスターを見ながら「この中だったらこの人がいいー」と思春期前後の女の子達が話し合ってて可愛かった。今年は椅子もないし前方のゴザ席もないし、どうする子ども達。と思っていたら、持参したゴザを敷いておにぎり食べたりしている。慣れとる。

ドグラマグラ〜アリノネ「附子(呆版)」

 演奏前にステージに吊るされていた白い布に、ペタペタッと赤い手形がついた時はギョッとした。なにごと? と思ったら、絵のパフォーマンスだったという。
 今回のドグラマグラは場のウォーミングアップという印象。肩透かし気味に感じたが、一番手なのでまあ妥当なんでしょうなあ。
 幕間にはアリノネの舞台。あ、逃げてた人だ、あ、夜の女王だ、と「新しい天使」時の役柄で人をアイデンティファイしていて、あの時の舞台を思い出してちょっと懐かしくなったり。しかし何故こんな時代がかった喋り方なのか? と思いながら見ていて、ああこれ附子じゃん、と途中で気がつく。冠者に相当する「子ども達」が『あおぐ』『ケイト』と呼びこまれると座がワアッと沸いたので、ああ二人の繋がりの人が多いのだなと思った。しかし『あおぐ』に向かって「あおぐぞあおぐぞ」って……シャレか? 別に誰も笑ってなかったが気になった。ノロウイルス不二家とタイムリーなキーワードを絡めてキレイにオチをつけるところに感心。見事でした。こういうアレンジができるのっていいよなあ。
 あと大槻オサムさんの表情は色々なものが出まくっているのに怖くない*3。むしろ近寄ってまじまじと見たくなるような感じ。不思議で興味を惹かれた。

倉地久美夫

 子ども達が倉地さんにどういう反応をするか、倉地さんがどう出るか。「倉地さん vs 子ども」というか、プロレスで注目のカードを観る時の様な期待で私の脳内はムンムンしていたわけですが、倉地さんは「エチュード」で始まる、前観た通りの倉地さんだった。曲間でボソボソボソと地味な、でも引き込まれてしまう話*4をするところも同じ。というか、倉地さんを観るのは4回目だが、話を聞くのはダイアログスの時以来のような。
 音が途切れる「間」の部分も思わず聴き入ってしまうのだが、そこで子どもがビニール袋かなんかをガシャガシャいわせる音が入ったりするので注意を削がれる。ええい子どもうるせえ。ちゃんと聴くと「ナニ?」と聞き返したくなるような感じがあって面白いんだけどな、子どもにはやっぱり難しいんかなー。しかし「朝日」くらいからちょっと子ども達の反応が温まってきて、「太陽……」とかポツッと口に出していた。うん、自分でも言ってみたくなるよねえ。
 最後の「スーパーちとせ」は入眠時幻覚のように、何でもない瞬間が断片的に何度も何度も押し寄せてきて圧巻だった。この人の演奏を聴くと頭だけが興奮するというか、凄く奇妙な反応が起きる。夢中にはならないけど、面白いなあと思うという。数学の解説を見ている時のような感じ。

呆けすとら(含ミステリアスケイト)

 チンドン屋の音楽みたいのに合わせて役者が入ってきて、アリノネの幕間の劇が始まる。呆版附子が良過ぎて、こちらでは特に強く喚起されるものはなく。しかし劇の終わりには再びチンドン屋の音楽が大きくなって呆けすとら、という流れには思わず見入ってしまう。
 今回はケイトさんのコーナーが呆の中に含まれており、いつ出てくるかいつ出てくるかと、客の期待もかなり高まっていた。「鬼は外〜」のかけ声も高らかにめづまりさん(アリノネ)が登場した時、「待ってました!」と客から声がかかったが、多分ケイトさんだと思ったんだと思う。
 場の期待膨らみまくりの中、満を持してミステリアスケイト登場。ケイトさんといえば毎回注目されるのが衣装なわけで、今年のテーマは何なのか登場時から一生懸命推測したのだが、今回は特になかったっぽい。赤いビニールっぽい生地のワンピースと、天辺がワンピースと同じ素材で出来たつばの広い帽子に丸メガネをつけてて70年代ぽい雰囲気。そして狙ってなのか結果的にそうなったのか、コンドームに凄く似ていた。ワンピースの裾の仕様と、生地の質感のせいだと思う*5。そんなケイトさんは1曲目、ブリブリのハードロックに合わせて「♪タイプだわ〜」と歌っていた。新曲? と思いきや、ツェッペリンに歌詞を付けた*6とのこと。ツェッペリンならそりゃハードロックなわけですね。ロックといえばドクロのイメージということで、猫の頭蓋骨のような首飾りも付けていた。確かに私も「ロック=ドクロ」のイメージがあるなあ。メタルの功罪を感じる。
 呆けすとらは「身体が大きい分、動きももっさりした動物」という印象が強いのだが、今回は呆けすとらが一番良かった。呆は観る度印象が良くなっていくような気がする。楽しくて、身体を揺らさずにはいられなかったなあ。終盤、フロアの中央辺りにいたお客さんがスクッと立ち上がって、周囲の客を立つように促していて、あれに背中を押される格好で私も立った*7。へへへ、やっぱり思うように身体を動かして音を楽しむ方が楽しいもんねえ。壁際で他の人にぶつからないように気をつけながらチータカ踊ってたら、私の脇にいた男の人二人が「自分らも立とう!」という感じで立って踊り出したのは嬉しかったな。

終わりに

 事前に20:30終演予定と聞いていたのだが、今回も時間キッチリに終わる。開場から開演まで30分しか時間をとっていないのにほぼ定刻開始だし、終演も予告どおり。ライヴで30〜40分の遅延は当たり前という感覚があるので、これって結構凄いことだと思う。
 20:30終演という設定もかなりありがたかった。小倉までライヴ観に行って、23時前に帰宅できるなんて夢のようだわ。子ども達が多く来るライヴだし、この位の時間に終わるのが絶対良いと思う。この人たちグループのイベントは、枠がキッチリしてて、非常に快適かつ安心。
 去年の「気合入りまくりです! 力入ってます!」という感じの派手さはなかったが、洗練という言葉が脳裏をよぎる、個人的には今まで観た中で最も楽しめた歌舞音曲スペクタクルショウだった。楽しかったです。

*1:小倉でのライヴに行くと大抵帰宅は1時を過ぎるから。

*2:というか、以前が悪すぎた。

*3:色々なものが出まくっている人は他にもいるが、そういう人の多くは「触れたら(相手が)どうなってしまうかわからない」あやうさがあって、緊張させられることが多い。

*4:「ベストカメラ」は見た夢をそのまま歌にしたと話していた。夢の中では混声合唱団で凄い迫力だったらしい。この歌で混声合唱団てどういうことよ? あと、新作製作中らしい。

*5:国際エイズデーのイベントに出たらウケそう、と思ってしまった。

*6:ツェッペリンを聴いてたら「タイプだわ〜」という日本語詞が浮かんできたらしい。

*7:あの人はサクラ(と言ったら変だけど)だったのかな? でもああいう形で起立を促される方が、自然で私は好き。