呆けすとら歌舞音曲スペクタクルショウ2009 at FUSE(小倉)

御下賜品

出演

  • Tommy&Aji (アコースティックロック)
  • 山崎箜山(尺八)…尺八・土笛演奏家
  • 単独旅行舎(from広島、芝居・パフォーマンス)
  • 呆けすとら(即興ジャズロック管弦楽団)

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 最早(私にとって)早春の恒例行事となりつつある呆けすとら公演。開演15分前に到着するとまだガラガラだった。この公演は例年開演時刻きっかりに始まるので、遅刻すると絶対オープニング*1を見逃す。これは周知のことかと思っていたのだが、そうでもないのかな。私は見逃すと悔しいんだが、そんなに悔しいと思わないものなのかな。
 開演まで、今年からの新企画・フリマコーナーを物色。このフリマ、バイヤーが任意のお金で品物を買い取れるという太っ腹企画で、商品には出品者の名前が書いてあり、プロレスラーのオークションみたいだった。そして、出品物の中にはフラスコとその他理科器材がいくつかあって物凄く不思議だった。出品者に仕事でこれらを扱う人がいるのかしら。
 歌舞音曲といえば客席最前列に陣取る子ども達だが、今年は子ども達の年齢層が高めで明らかな幼児はほとんどいなかった。今年は一昨年・昨年と出演者のラインナップがかなり変わっており、子ども達がどのような反応をするかも注目ポイントの1つだった。

Tommy&Aji

 ジャンベとギター2人組のユニット。「皆さん手拍子をお願いしまーす!」「この後はあまり手拍子をお願いすることもないからですねー!(観客笑い)」という和やか・手馴れた喋りに、呆気に取られるわたくし。その進行のこなれっぷりときたら、このまま漫談が始まりそうな勢い。音は明るく、爽やかに盛り上げる。健康な若者はいいねえという感じ。

鳥人間partⅠ

 単独旅行舎の劇。PartⅡもそうだが、演奏の幕間にフロアで舞台が進行する。おまわりさんと「派遣会社から別の派遣会社に派遣されてる派遣社員で、更に兼業で派遣会社も経営(?)している」ややこしい役柄の大槻さんの丁々発止は面白かったが、こちらが引き込まれないうちに派遣切り、不景気、ガザの話、アメリカの政策パターンの話、と身を切るような話が立て続けに入るので、頭では理解できるけど身体に入らず微妙。独り語りが長い芝居はちょっとしんどい。

山崎箜山

 尺八のソロ。私は「尺八=NHK-FM邦楽の調べ」のイメージしかなかったのだが、予想外な音の綺麗さに驚く。音が一筋の光のように会場を貫いていく。音から静寂を喚起されるようで、回りがガサガサしてても不思議と気にならない。ただ、子どもは結構ダレてて、モソモソしたり親に話しかけたりして頭が動いているのが目についた。まあねえ。最後のアヴェ・マリアには、鉄砲玉の死亡フラグ立った場面*2が脳裏に浮かび、(そんなイメージ映像をつける私の脳に)どうにも閉口する。

鳥人間partⅡ

 partⅠの続き。「とり」とは「ひとり」から「(戦いの)火」をとったもの、という種明かしにはひざを叩く。しかしやっぱり身体にはうまく入ってこず残念。笑いや皮肉が効いてたら自分にはもっと入って来やすかったと思う。でも「壁の向こうから歌が聞こえる! 私達も行ってみよう!」という台詞と呆けすとらのコーラスが繋がった、劇終幕・呆けすとら開始は希望(と残酷な結末も予想させる不安)に満ちてて、とても綺麗だった。

呆けすとら

 劇から呆けすとらへの入りはとても自然で綺麗で、観ているこちらも「呆けすとらが始まる!」と高揚するが、始まった音のバラバラっぷり・ホーンの外しっぷり*3に椅子からずり落ちる。な、なんだこれ……。膨らんだ気持ちも空気漏れ起こしてしぼみ行く。1曲挟んで「平壌(仮称)」のもっさり具合に泣きそうになる。なんかあったのか呆けすとら。まあ年に一回しかないしな。
 しぼんだ気持ちのまま、ミステリアスケイトのコーナー。そしていきなり花をもらう。歌舞音曲の卑弥呼から花を賜るとは、こりゃ春から縁起がいいわい*4。今年のケイトさんは、花冠を頭と身体に纏ってSWEET MEMORIES聖子ちゃん風……と思ってよくよく見たら、スカートは黄色いビニールテープを裂いて作った腰ミノだった。「小浜市ハワイアンセンターのフラガール風(記憶曖昧)」らしい。「ミステリアスケイト史上最安の衣装」だそうな。開演前、バースペースにミステリアスケイト歴代衣装が陳列してあり、脇に賽銭箱が置いてあった。ああ今年はケイト衣装の展示企画があるのか、そして観覧料もとるのか、あははと思っていたのだけど、ケイトさんのMCで、あれは展示ではなくてフリマ商品の一部だったことが判明*5
 ケイトさんのコーナーが終わってからの呆はほぼちゃんと1つに聞こえた。前半のバラバラっぷりは何だったんだろう。私の聴く準備性の問題もあったんだろうか。ギターとベースの掛け合いは格好良く、フラガールっぽい格好の女性ボーカルは膨らみがあって綺麗。ドラムは三番勝負みたいのんしてて、最後は行進曲で掛け合いしてた。ははは。
 舞踏の人は頭にバンダナ巻いて登場。最初は俯いて背中を丸めて登場したので、今風の人が手ぶらで出てきたように見えて何をする人なのかわからなかったのだが、顔をこちらに向けたら白塗りでギョッとしつつ「あ、舞踏の人だ」と。夜中のコンビニで会ったら腰抜かしそう。ビニールシートに座っていた子ども(6〜8歳くらい?)が舞踏の人を見てピョンと後ずさったのが可笑しかった。君の反応は正しい。
 本編ラストは「火ノ粉」、大槻さん*6前口上を述べたトムさんが出てきてフロアを煽る。しかし誰も立たない。ああどうしよっかな、うずうずしながらも気が引けて迷っていると、ぴょんと女の子と女性が立ってくるくる踊りだした。その後、トムさんに誘われるようにして立った男の子が、今までもじもじしていたのは何だったんだ?という勢いで踊りだしたのは物凄く可愛かった。映画版ヘドウィグの少年時代*7を思わず想起したぞ。男の子につられて、私も「えい!」と席を立った。女の子も男の子もにこにこと(ちょっと照れながら)踊っている様子は可愛くてポジティヴなエネルギーを放っていて、なんかこっちの身体も動かされた。
 22時少し前に終演。近道しようとしてちょっと後ろ暗い雰囲気のある通りを通ったら、ストリップ劇場やポルノ映画館が現役稼動していて呻った。もう地方都市では絶滅したかと思っていたけど、ちゃんとあるのね。小倉はビニールの薄皮1枚の下に生々しい物がちゃんと蠢いているような印象があるが、今日のライヴと帰り道で、その印象をまた新たにする。

追記

 音頭取り谷本さんのブログにて、当日の演奏の動画が紹介されています。ステージ上からの撮影なので舞台全体の様子は把握できませんが、当日見に行っていた人や歌舞音曲観覧経験者には面白いかと。関連動画では呆けすとらリハーサルの様子なんかも公開されていて、呆マニアにはたまらんかと思います。

上記の動画は「レクイエム」(名前初めて知った)。舞台両端にはそれぞれ「歌舞」「音曲」と書いた布が吊るしてあり、呆けすとら演奏中にライヴペインティングがあった。「音曲」布の方にいつの間にか見開いた目が描かれていたのだが、「音」の字が眉間と鼻に寄った皺に、「曲」の字が剥き出した歯に見えて、物凄く悲痛な表情と受け取れるものだった。で、「レクイエム」演奏時はそんな顔の目から青や朱鷺色の涙がライヴペインティングで描き加えられていて壮観だった。

*1:今年は托鉢僧スタイルのトムさんがチンドン屋セットを装着して前口上を述べる比較的シンプルなものだった。

*2:「これを最後に足を洗おうと思うんだ……」的な場面。

*3:ホーンが決める場面の音がおもいっきりヘタッてて「こらー決めろー!」と昭和のプロレス客ばりに指差して怒りそうになった。

*4:鬼夜でも「あの人すごーい!」と指を指された程の縄をいただいたし、今年はなんだか縁起がいい。

*5:音頭取り谷本さんのブログによれば、衣装はちゃんと売れたらしい。ぽぽぽぽー。

*6:自前の髪の大槻さんを初めて観たような気がする。舞台「紫」の時も自前だったかな? そして、服を着ていると身体の美しさというのはわからないものなのだと(当たり前のことながら)改めて思った。舞踏ではどうして全裸で白塗りで踊るのか、その理由がわかったような気がする。

*7:ラジオから流れてきたロックにあわせて、ベッドの上で枕を振り回しながら踊るシーンがある。

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