小呆けすとら at DEL SOL(折尾)
ミニ呆けすとら≒拡大ドクラマグラ?
呆けすとらはここ数年、夏期と冬期に公演を行っている。ついに春期にも公演するのか!と思ったらこの編成。
【出演】
サノテツヤ(ss、ts)、西田弘道(as、bs)、宮野章(g)、フクヤマワタル(b)、白川和宏(drs)、谷本仰(音頭とり、vln)
(呆けすとらホームページ)
……これ、呆というかドクラマグラにサックスが2本入るだけなんじゃ? 1本ならドクラマグラで、2本入ると呆なのか? ミニ呆と拡大ドクラマグラの違いって何。と内心非常に疑問だったのです。
客は10数名、開演予定時刻より遅れること20分。開始曲(呆けすとら定番のOP曲)で、あ、なるほど拡大ドクラマグラじゃなくてミニ呆けすとらなのかと納得。谷本さんもがっつり音頭取ってる。
サックス二本のやり取りが凄く気になったのだが、後ろにいたせいでさっぱり見えないので、ちょこっと移動。ナウシカのテーマが入る曲は泥縄の歌つき。『泥棒捕まえたけど縄がない。縄は綯わなありません。綯うしかないやんか。綯うしかないやんかー!』 3回目くらいでようやく気づいたわたくし、「あー!ナウシカやんかー!」。相変わらず楽しい。前半最終曲のベースラインがえらいカッコ良くて内心大盛り上がり。あのうねりながら昇っていく感じは凄くいい。お店のスタッフも踊っていた。
後半は「ナーダム」からスタート。サックスが複線を担っているのがよくわかる。そうか、楽器が増えるというのは違う音色が増えるということだけではなくて、メロディの層が厚くなることなのかとここに来てようやく気づく。
不意打ち
曲と演奏そのものは楽しいのだが、流石にこれだけ回数重ねて観てると、色々な場面で次の展開が予想できるようになってしまう。先が見えてしまうのは面白くないよなー。うーん、ちょっと見過ぎかな私。と思っていると、本編最後から二番目の曲に足元を掬われる。この曲、出だしは感傷的なバイオリン。しんみり聴いていると、まるで関係ないように対照的な調子のソプラノサックスが繋ぐ。この思いがけない展開(自分の感傷などまるで関係なく進む曲の展開)に、可哀想とか思いなさんな、あんたの感傷とその人の生は別物なのだから。という仕事の戒めがふっとよぎる。サックスが消えて曲が本格的に始まれば、息が詰まりそうになるほど旋律の合間が美しい。こういう感じの間を存分に堪能できるのは久しぶり*1。すっかりやられてしまい、そのまま涙が止まらなくなってしまう。必死に堪えるが、目の端と鼻から流れ止まず*2。曲が「もう私は死んだけど、悪くない生だったよ」という(死者からの)メッセージに聞こえるのも久しぶり。「聴いてるうちに涙が止まらなくなってしまう」ことは、もう大分慣れてしまった昨今はもうないだろうと思っていたのに。
ああ、これで終わりかなああと思ったら、高らかなギターの音。うわ、「火ノ粉」だよ!デザート出てきたと思ったら肉がまた出てきたような感じ。もう食べられないよ〜。延びたまま鑑賞。
アンコールは時間の制約上厳しかったようなのだが*3、お店のスタッフは「どうぞどうぞ!」のジェスチャー。わーい。てか、私もアンコール催促した客の一人ですすみません。アンコールは軽妙な曲*4で陽気に終わる。谷本さんのメンバー紹介をフクヤマさんのテルミンが「通訳(谷本さん談)」する。ぎゅわわわ〜んぎごごー。そしてテルミンにドラムが「カコッ、ポテポン」とツッコむ(ライヴ後半ではサノさんのサックスにもツッコんでた)。わははは、楽器が喋ってる。そして最後の最後、ソプラノサックスの見せ場で、背後にいたフクヤマさんがスポーツタオルを手に取り、そっとサックス奏者サノさんの肩にかけたのを見て爆笑。セコンドかい!
22時15分頃終演。休憩を含めて2時間半くらいか。久しぶりに「話すと音が洩れる!」状態になって帰る。音が洩れると勿体ないのだが、反芻すると涙ぐむという、どないせいっちゅうねん状態に。
割とまめに聴きに行ってるとどうしても「次は何が出てくるんだろう?」というタイプの緊張感はなくなってくるし、聴き始めた最初の頃のような反応はしなくなっていくものなので、今回こんなことになるとは思わなかった。あの「えええ? そうくるの??」と思ったサックスに意表を突かれて、ガードが低くなったところをやられたか? どこで何があるかわからん、油断は禁物ですな。