「北欧の旅―カレル・チャペック旅行記コレクション」

 「白い病」に引き続きチャペックの本。最初は寝つけない時のお供に少しずつ読んでいたのだけど、小船に乗せられて白夜の極地へ向かう行程あたりから面白くなってくる。小船への揶揄と愛を込めた記述。波が甲板まで入ってくる夜に交わされる夫婦の会話は、私自身が経験したシベリア慰霊旅行*1のことを思い出させる。そして、静謐な美しさに満ちたフィヨルドと白夜の記述に息を呑む。フィヨルドの簡単な線画が途中に入っており、文章と一緒にこの挿絵を見ると、鮮やかに情景が浮かぶ仕掛けになっている。そうか、文章でこんなに美しく描くことができるんだな、こういうタイプの文章を長く読んでこなかったな、と思う。一時期から言い回しが大袈裟に感じられて鼻につき、小説を読めなくなっていた。また読めるようになったんだな。すごく嬉しい。

 

*1:シベリア抑留で亡くなった人達の慰霊に回る旅行に過去3回ほど行っている。シベリアのとんでもない僻地に行くので、一日中デコボコ道を車で揺られたり、水しか出ない建設中のホテルに泊まったり、快適とは言い難い道中を過ごす。私は「旅行」ではなく「合宿」だと思っている。