全国の緊急事態宣言解除へ

 日雇い仕事の帰り、車内でニュースを聞いていたら安倍首相の記者会見が始まった。全国の緊急事態宣言が解除されるという。「わずか1か月半で流行を収束」「世界からの注目と期待」「世界最大の対策」、派手な言葉が並ぶ。

 でも、私は全く空虚だった。意図的に検査実施数を控えている、そもそも検査能力自体が低い(高める気もない)という噂のある中で得られたデータに基づいた宣言解除はなあ。まず解除ありきで、データを公表しているのではないか? 多分またすぐに大量感染が発生するだろう。そう思っている人も多いのではないか。

 誠実にデータを集めること、集めたデータを素直に処理し考察すること。このことの重大さと責任の重さを痛感する二か月だった。そして、感染者が差別されたり家族も排斥されたり、社会的弱者への攻撃や差別がみるみるうちに露呈したり、「自分の生きる社会がこんなに野蛮で排他的で、非理性的だったのか」と愕然とした二カ月でもあった。私はデカメロンみたいに籠っていられる環境に身を置いているから呑気にそう感じているのだろう。感染リスクに身を晒しながら生活せざるを得ない状況だったら、やっぱり排他的で非理性的にふるまうようになるのかしら。

デカメロン 上 (河出文庫)

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  そして、政府の「仕事しなさ」にも驚いている。宣言解除だけど未だマスクは届かないし、特別定額給付金も届かない。こんなに仕事ができなくても許されるものなのか。そして検察官の恣意的な定年延長可にする法案とかスーパーシティ法案とか、不急不要の最たるような法案を通そうと頑張っている。映画でこんな政府が出てきたら「そんなわけないだろ、非現実的過ぎて面白くないわ!」って評に書かれるだろうけど、これが現実だからな。事実は小説より奇なりといえど、奇過ぎる。