母よ、あなたは偉かった

 今、四日市のコンビナート見学に行く話が仲間うちで盛り上がっている。私は現地まで電車で行くつもりだったのだけど、車持ちの先輩が乗せていこうかとメールをくれた。よく知らない人だし、気を遣うから気が進まないな、などとグジグジ。
 ここでふと、伊勢湾岸道路のことを思い出す。伊勢湾岸道路は林立する工場群の中を抜けていく道路なので、それはそれは壮観らしい。google mapで調べてみると、本当に現役稼働中の工場群の中を抜けていくのだ! しかもこの道を通るのは四日市までの王道ルートっぽい。うーん、通ってみたい。この機会を逃したら、次はいつ伊勢湾岸道路を通れることか。しかし夜の道路じゃ大して工場群は見られないよな……。悶々と考え込んでしまう。最早先輩がどうとか言うよりも、伊勢湾岸道路からの風景のことで頭がいっぱい。今、「伊勢湾岸道路通るからドライブに行こう」とか誘われたら、相手が知らない人でもついていきそうな勢いだわ。
 私は高校生になっても「知らない人に『チョコレートあげるから』と言われてもついて行ってはいけません」と母に言われていて、その度に子ども扱いするなと憤慨していた。しかし、今の自分を振り返ればどうだろう。チョコレートが伊勢湾岸道路からの風景になっただけだ。母の注意は本質を突いていたのだなあと妙にしみじみ。