「Contemporary Music Festival」 川下直広×蝉 / 山本精一×内橋和久×Andy Moore / 倉地久美夫 / アルタードステイツ at Gate's7(福岡)

 「Contemporary Music Festival」というお祭りの2日目。4時開演、出演者4組なので最長でも8時には終わるだろうと思っていたら甘かった。本編終了8時、その後セッション1時間15分で全体の終演は9時過ぎだった。5時間て! 噂に聞いたSKIのライブより長かったよ!

GATE'S7というところ

 ライヴハウスといえば、淀んだ空気・煙草の吸殻とビラがポツポツ落ちた汚い床 は欠かせないわけですが、分煙だわ、フロア全面にテーブルと椅子が並んでるわ、しかもそれらも床も綺麗だわで何だか素敵。イメージと違い過ぎて、およよよよ? とキョロキョロするわたくし。同じ階にはMAHARAJA FUKUOKA(!)が入っているし、なるほどこんなハコがあったんだなあとしみじみ。あとビールが麦々してて美味しかった。

本編

 開演時刻4時ぎりぎりに会場到着、座った途端に最初の蝉が始まる。おー間に合ったー! 防音も音響も安心して聴いていられる感じで、穏やかな心を持って聴く。本日の蝉は川下さんというテナーサックス奏者が入っており、これが全く違和感なく溶け込んでいた。というかあの爆音に馴染み過ぎてる。そして約50分の出演中ほぼノンストップで演奏し続けてた*1ので、よく知らないけど間違いなく只者ではない、何だろうこの人? と思った*2
 蝉、その次の内橋和久×山本精一×アンディムーアはいつの間にやらウトウト眠ってしまう時が何度か。でええい勿体無い。大体こんな後ろにいるのがいかんのだ! 内橋グループなんか機材を山盛り積んでて面白そうだったのに、後ろにいるせいで全然見えなかったぞこんにゃろめ。前行こう前! おそるおそる前方に偵察に行くと、前方3列はパイプ椅子をステージに向かって並べてあり、ぽつぽつ空席があったので適当な場所を確保。倉地さんと外山さんのライヴで見かけた少年が最前列に座っていた。おお、また来ていたのか。彼は非常に感心な子どもで、まだ5〜7歳程度だと思うのだが、あの時のライヴ(2時間くらい)でも騒がしくすることなくじっと座っていたのだった。今日も静かに座っており、彼の優秀さに思わず感嘆。そしてこの歳からこの手の音楽とは、なんという英才教育*3
 前方に移ってから一発目は倉地さんだった。「遅刻してきた」そうで*4、「諸先輩達を差し置いて後からするのは恐れ多くて……緊張しているのです」というようなことを言っていた。ははは。よく見ると本日は緑と赤のド派手な靴を履いていた。あら珍しい。「8mm監督」はまたもアレンジが変わっていた。ライヴに行くと次々違うアレンジが見られるのが楽しい。「ベストカメラ」は歌詞もちょっと変更されていた。そして、端々で客がよく笑う。「8mm監督」の台詞時、「ベストカメラ」の曲解説時、「アットホーム*5」「3万年後」の歌詞を書いた紙を破り「ボスッ」と音を立ててマイクスタンドに挿す時、くすくす、わははとよく響く笑い声。なんかすっかり見慣れてしまって特別可笑しく感じなくなっていたのだが*6、これらは可笑しい行為なのだな、そして倉地さんを見慣れていないお客さんが多いのだな、等と推測。個人的に、本日の興味深かったMCは「曲ごとのチューニング」について。あれは琴(箏ですかね?とも言ってた)が演奏の度にチューニングをするところから思いついたんだそうな。ぽぽー。本日のセットリストは「8mm監督」「ベストカメラ」「中央公園」「アットホーム」「3万年後」だったと思う。「ハンガリータコス」という曲名をアナウンスしていたが、この曲は時間の都合上か演奏されなかった。凄いタイトル(ハンガリーのタコスって!)で、是非とも聴いてみたかったのだけど。次回に期待。
 アルタード・ステイツにはウンベルティポのベースの人がいた。ああこれは、と思ったら、やはりこのバンド、ベラボウに演奏が達者。ベース・ギター・ドラムの掛け合いがえらい格好いい。しかしギリギリギリと昇っていくようでも突き抜けないので、カタルシスはない。そこから突き抜けちゃえばいいのに!と思うのだが、それはしないんだよねえ。意図的に避けてるんだろうか? 割と不思議。

セッションタイム

 アルタード・ステイツが終わったところで終わりかな? と思いきや、「出演者でセッションをします」と30分かけて楽器のセッティング。このお祭り2日間の全出演者から、14人がエントリーしているのだとか。ほう。全員で「いっせーのせっ!」で賑やかに短く演奏して終わりかと思ったら、エントリー14名の中から、内橋さんに指名された人はステージに上がり、その場で5分程度のセッションを行うというルールらしい*7。ほほほう。
 私はセッションて何だろう?位の無知っぷりだったのだが、これが意外に面白かった。そろそろと注意深く相手に合わせる人、最初からぽーんと合わせる人、ペースを握って離さない人、どうやって絡むか様子を伺う人。派手な展開はないけれど、演奏者の様子を見ながら音の動きを見ると凄く面白い。「あ、仕掛けた」「あ、引っ張った」「あ、乗っかった」と次はどう動くか目が離せない。特に面白かったのはビブラフォン山本精一さん(演奏者の会話が聞こえてきそうで)、ナスノミツルさんの出番2回(演奏の対比が)、倉地さんとアルタード・ステイツのドラムの人(独特の緊張感)、川下さんのセッション3回(回を増すごとに激しくなるサックス)だったか。
 演奏といったら聴くのがメインだとばかり思っていたが、こういうのは見ながら聴く方が圧倒的に面白いのだな、と初めて実感する。音は大きく注意を惹くような展開はしなくても、「演奏者はどう動くだろう? どういうやり取りをするだろう?」という点を含めて鑑賞すると非常に面白い。派手さはないけど、どう勝負に出るか? というところを面白く見るという点で、格闘技を見ている時の面白さに似ていると思った。何の御縁か、近年この手の音楽を聴きに行く機会が増えているので、これからこの手のライヴに行く時は、演奏者がよく見える位置で見ようと思う。

*1:肺活量どうなってんだ?

*2:後で調べてみたら、なんか有名な人だったようです。全然知らんかった。

*3:最後のセッション時、内橋さんから「(このイベントは)どう?」とマイクを向けられていた。彼は少し沈黙して「……面白い」との回答。空気を読む偉い子だなあとしみじみ。「家でもこういうのばかり聴いてるんですか? 灰野敬二とか? たまには子どもらしい音楽も聴かせてあげて下さいよ」と引率のお父さんがツッコまれていた。ははは。

*4:多分このステージの前にあった「世界激場」に出演してきたためだと思われる。

*5:ふちがみとふなとさんのカヴァー。

*6:ヤマジも似たようなことをするし、「マイクスタンドに歌詞の紙を挿す」のは割と普通の行為なのかとすら思い始めていた。

*7:1回に2〜4人がステージに上がり、2周していた。