毎夏恒例・NHKの戦争ドキュメンタリー

 NHKスペシャル「激闘ガダルカナル 悲劇の指揮官」を見る。海軍と陸軍の連携のまずさに焦点が当てられ、指揮官だった一木大佐は、連携のまずさに翻弄された気の毒な隊長として描かれていた*1。米軍の戦法がどうなっていたのかが構造的に描かれていたのは良かったが、何だか物足りない。辻正信が陸軍兵士のことを慮って憤るシーンとか、嘘くさくて首を傾げてしまう。ノモンハン、拉孟・騰越の戦い等、全滅も辞さない無茶な作戦を何回も立案実行している人じゃん。海軍のために陸軍が犠牲になる事態が気に入らなかっただけじゃないの? 

 歴史物の面白さは、資料の公開と共に新しいことが明らかになることだと思う。今回のNHKスペシャルを見てから、10年前に作成された「証言記録・兵士たちの戦争」ガ島編を見ると、現地の兵士たちが翻弄された事態の背景に何があったのかがわかるので、より興味深く見られた。

[証言記録 兵士たちの戦争]ガダルカナル 繰り返された白兵突撃 ~北海道・旭川歩兵第28連隊~|番組|NHK 戦争証言アーカイブス

 今回の内容(陸海軍の連携のまずさ、米軍の戦略)に「兵士たちの戦争」の証言を組み合わせたら、重厚な内容になったと思うんだけどなあ。変にドラマ再現するより、兵士だった人達の証言の方が重みと迫力があるのに。

 「兵士たちの戦争」シリーズは無料公開されているので、再活用することに引け目があるのだろうか。それとも、この番組とアーカイブス以外では証言を使わないという誓約を交わしているとか? 実に勿体ない。

*1:一木大佐の遺族にインタビューして登場までしてもらっている以上、一木大佐を無能や悪人として描くわけには行かなかったのだとも思う。