合宿上映会

 夜は長いからと、親方がDVDを持ってきてくれた。全員で酒を飲みつつ観賞。親方は昭和の頑固親父のように振る舞う人だが、こういう意外にマメな気配りが端々にあって萌える。

マーダーボール

 車椅子ラグビーのドキュメンタリー。登場人物達は上半身筋骨ムキムキでタトゥーを入れ、競技中は激しくぶつかりあって敵方をひっくり返す。自分の価値を認めない母国のチームを提訴し、更には敵方チームに移籍して母国チームの情報を流す。ギラギラと荒々しい命の生々しさが全編にあって、障害者スポーツという言葉に漂うクリーンで弱々しいイメージなど微塵も感じさせない。
 しかし、見ていて私は何だかホッとした。その理由は、こういう風に「その人らしく」いられる選択肢があるのだと知られたことにある。受傷前にガラが悪くマッチョだった奴が脊髄損傷したら、そうでない人よりも余計しんどそうだなあと漠然と思っていた。受傷によってマッチョに振る舞うことができなくなれば、当人の意にそぐわないアイデンティティの再構成を余儀無くされる。その悔しさ、無念さはいかばかりだろうかと思っていた。大体こういう人達ってエネルギーが外側に向くタイプなのに、今までのように向けることができなくなるから物凄くイラツキそうだし。しかし、受傷後もマッチョに振る舞う(=当人が当人らしく振る舞える)ことは可能なのだ*1
 私はマッチョな文化に全然馴染めないし知らないので、視界の範囲外にあった*2人々の世界を知ることができて非常に面白かった。自分のチョイスでは、絶対に見ることがなかった作品だろう。他人が勧める物を見るのは、こういう新しい出会いがあって良い。

マーダーボール [DVD]

マーダーボール [DVD]

ちなみに、最初タイトルを聞いた時「小玉スイカ*3か?」と思ったのは親方には秘密にしておいた。「murder ball」だったのね。

*1:ただ、選手の受傷前の生活史や、車椅子の高額さから、社会経済的に恵まれた層しか享受できない選択肢なのだろうとは思う。

*2:嫌悪感を喚起されることを理由に、無意識に無視していたとも言える。

*3:マダーボール