九州北東部を輪行する(1日目・門司)

はじめに

 スポーツバイクを買った当初から、輪行をしたいと思っていた。自転車でブラブラと回りたいところは沢山あった。行った先でレンタサイクルという選択肢もあるが、レンタサイクルの自転車の多くはママチャリで、長時間乗るのには向かない。やはり、自分のスポーツバイクを持って現地に行きたかった。
 パンクしたらどうする? 事故ったら? そもそもタイヤの脱着をちゃんとできるのか? 等々、不安要素が多くて輪行の実行は踏みとどまって来た。しかしGoogleストリートビューで行きたい所の映像を見ているうちに、輪行欲がどうにも抑えきれなくなった。行くよ私は! 自転車乗るには寒くて辛い季節だけど!
 当初の計画では若松→門司港→別府→佐伯の予定だったのだが、仕事が終わらないため旅程を1日減らし、若松行きを取りやめる。これで門司港→別府→佐伯の旅程に決定。自転車をかついでどこまで行けるか、さてはてどうなるか。

超速fiveはホントに超速だった 6:07

 お店の人に勧められて、輪行袋は超速fiveというのを買った。
これは前輪だけ外して入れるタイプの輪行袋で「5分でできる輪行準備」がウリらしい。お店で2回、自宅で1回練習して今日の本番に臨んだのであるが、10分程度で準備完了。練習時に20-30分かかってたので、もう少しかかるかもと思っていたのだが……。ホントに超速やでコレ……。

OSTRICH(オーストリッチ) 超速FIVE輪行袋 ネイビーブルー

OSTRICH(オーストリッチ) 超速FIVE輪行袋 ネイビーブルー

 しかし、如何せん外すのが前輪だけなので物凄く幅を取る。駅のエレベーターには乗ったが、輪行のセオリーである「車両最後部に自転車を置け」はかなり厳しい。最後部全面を塞いでしまうので車掌さんの出入口を塞いでしまうし、非常用設備にもかかってしまう。
 現在、車椅子用スペースに自転車を置いて、付き添いの人用の椅子*1に腰掛けているのだが、車椅子の人が乗ってこないか戦々恐々。休暇に入っている人が多いはずだし、早朝の電車なので大丈夫だとは思うけど……。あとここ寒い。そしてトイレの前なのでうっすら尿臭がするのが切ない。

門司を散策

 ホテルに荷物を預け、小倉方面に向けて199号線を走る。曇り空だが雨は降りそうにないし、走るのが嫌になるほど寒いわけでもなく、なかなか好調。

こんなん見て和んだり、中原東の交差点から新日鐵の敷地内に入り込んで、工場の専用列車を眺めて胸ときめかせたり。年末の線路は静かで、ところどころ錆びの出た鉄塔や車体の具合が胸にしみる。
 気が済んだところで門司港に戻る。門司港レトロ地区は観光客が結構いた。以前門司港へ観光に行ったことのある妹の評価は「綺麗なのはごく一部だけ。大したことない!」と散々だったので、規模が小さいのかと思っていたが、これだけあるなら充分なんじゃないか。和布刈公園の方に向かったが、自転車を持って行くのは厄介そう*2だったので、関門トンネルの人道トンネルに向かってみる。ここは自転車と共にトンネルを渡れるのだ。

関門橋の下、船は往く往く。
 大きなエレベーターでごんごん下に降りると長い地下道と解説板。このトンネル工事が始まったのは戦前のことらしい。海水が浸水してくるので、ずっと排水機構が稼働していること、(理由はわからないが)「壁に触らないで下さい」という注意書きを見たり、トンネルは全長780mあるという説明書きを見ているうち、ちょっと動悸がしてきたので引き返すことにする。我慢できないほどではないのだが、どうも私はトンネルが苦手らしい。つい「ここで地震が起きたら……」「火災が起きたら……」とか考えてしまうのですな*3。トンネルの中ではジョギングをしている人達が数名いたが、わざわざこんなところを往復してまで走る意義がわからん。

 和布刈公園の周囲をぐるっと回り、瀬戸町〜大久保の辺りへ出る。門司港の辺りの住宅街は何となく皆赤茶けてて、砂糖醤油で炊いたお煮しめを思わせる。

異彩を放つ道場。
 商店街に出たら物凄く良い匂いをさせてる天ぷら屋さんがあったので、ゲソやかぼちゃの天ぷらを買ってみる。カリッとサクッとしてて大変美味しい。ビールにも良さそうだったので、明日(大晦日)も買いに行こうと思い営業時間を尋ねると「開店しているが、無くなり次第終了」とのこと。大晦日は年越しそばの具材として、天ぷらがよく出るんだそうだ。店のおいさんが「何しろ世界一の天ぷら屋だから!」と語尾に必ずつけるので、これは返しを要求されているのかと思い「なるほど、さすが世界一の天ぷら屋さんですね!」と返してみたら、おいさんが無言になってしまった。む、ダメだったか。

廃墟慣れ

 宿泊するホテルのすぐ隣はかつて日本セメント門司工場があったところで、かなり広大な空き地になっていた。野球場2個分くらいあるんじゃないかこれ。現存していた頃は大変な迫力だったことだろう。以前この工場がまだ現存していた頃、北九州在住の廃墟愛好者にこの物件の話を振ったことがある。その時の相手の反応は「? ……ああ、そういえばあの辺にそんなのありますね」くらいの薄いもので、大層拍子抜けしたものだが、今こうして敷地跡を眺めていると、いくら北九は廃墟が多くて廃墟慣れしているとはいえ、このサイズの物件にあの淡白なレスポンスは廃墟慣れにも程があると思った。
 ホテル帰着後、妹と電話。門司港に来ていると話すと「ボロボロの壊れた倉庫がいっぱいあったでしょ?」と言われる。いや……古いけどボロボロじゃないし、割と皆現役の倉庫ばかりだったけど……。気づかないうちに私も随分廃墟慣れしてきてしまっているのかもしれない。

緊急事態発生 21:46

 ホテル客室内に自転車を運び込み、夕食食べて入浴。すっかり寝支度を整えた状態で電話してたら、突然激しい噴出音がした。な、何事!? と思ったら、自転車の後輪の空気が全抜けしていた。携帯用ポンプでは入れられる空気量が少ないこともあり、空気を入れてみてもタイヤのどこから空気が漏れているのかさっぱりわからない。
 しかし、物凄い噴出音だった。テロ(毒ガス噴霧)でも起きたかと思った。

*1:使わない時は壁に収納されるようになっている椅子があるのだ。

*2:和布刈公園周辺には住宅の密集地区があり、長崎の住宅街のように山の中腹に私道が入り組んで建物が建てられており、物凄く魅力的だった。が、これまた自転車を持って進むのは困難だったので行かなかった。

*3:この話をしたら、全長10㎞以上あるという関越トンネルの話を妹からされる。やめてくれ。