被差別の食卓

 日本なら被差別部落、外国ならロマとか黒人とかアウトカーストの人とか、差別を受けてきた人々の食文化を紹介している本。本の内容自体は凄くシンプルで、1時間もあれば読めてしまう。「ソウルフード」という言葉の意味、フライドチキンはアメリカの被差別民の食事が起源、などちょこちょこトリビアもあって面白かった。
 自分達の食事を被差別者の食事として取材しに来たヨソモノ(しかも外国人)に、よく教えてくれたものだと思っていたら、筆者も被差別部落出身者であったことが取材の鍵になっているし、執筆の動機にもなっているようだった。
 私は自身も周囲の人達も含めて部落差別に触れたことがなく*1、それが非常にデリケートな問題であるらしいという漠然とした感覚しか持たないので、筆者がこの本を書くことになった動機とは一体どんなものなのか、本からは推測しきれない感覚にむしろ思いを馳せたのであった。「読んだ」けど、大事なことは多分全然理解できてないんだろうな。

被差別の食卓 (新潮新書)

被差別の食卓 (新潮新書)

*1:同和教育を受けたこともない。「部落」という感覚が生活の中で未だ生きていると知ったのは九州の人と接するようになってからだ。