帰省

出発前

 ここ2カ月、祖父は生死の境にあると聞いていたし、私が家を離れてもう10年くらい経つし、祖父と私はうまくいってなかったせいもあるのか、祖父が亡くなったことに対する現実感も感慨もイマイチない。しかし、昨日電話で話した母はなかなかイイ感じでテンパッていたので、母のサポートをせねばならんということはリアルに感じた。母の仕事手伝いのために帰るという感覚。

はじめての喪服

 飛行機の時間の都合により、百貨店で買わざるを得なくなる。しかし予算の2〜3倍っていくらなんでもあまりに高すぎる。会長(葬式のエキスパート)に相談すると、黒のリクルートスーツで大丈夫とのこと。更にパンツスーツ不可、パンプス必須、黒タイツはダサいからやめること、黒ストッキングは伝染したらすぐ履き換えなければならないからスペアを複数用意することなどのアドバイスを受ける。
 服を買うのは好きなんだが、さっぱり楽しくない。楽しいわけもない。いかにも合革という感じの黒パンプスとか買って暗い気持ちになる。とりあえず髪をまとめるためのピンを3種類くらい買ってささやかな慰めとすることにする。

19:57 羽田着

 東京さむっ!

帰宅

 母は意外と元気そうだった。祖父と対面する。祖父の頬はこけ、口は半開きで、髭も眉毛も伸びていた。
 それを見たら、何故か涙がこぼれて仕方なかった。どんどん出てくるので、傍らにいた妹に「じいちゃん痩せたね」と言うのが精一杯だった。