レッド・ドラゴン

 レクター博士三部作の第三作だが、時間設定は「羊たちの沈黙」前になる。レクター博士を捕まえた敏腕FBI捜査官が、レクター博士の力を借りてシリアル・キラーの逮捕を目指すお話。レクター博士大活躍で、妙なマメさが笑いを誘った「ハンニバル」から比較すると、原点に立ち返った感のある設定だった。しかし悪役がなあ。悲惨な成育史と身体的コンプレックスを抱えて残酷行為に至るとか、人間性と超越性の間で揺れるとか、イマイチ悪役度が物足りなかった。近年の自分の嗜好としては、振り切れた悪役に酔い痴れたい。ノートラウマ、ノー人間味。人の愛に触れて人間性を取り戻さないでいただきたい。悪のまま壮絶な最期を迎えていただきたい(迎えて下さらなくても良い)。

 最後の「生き返り」はストーリーから逸脱しているように見えて、余計なおまけに感じた。何故つけたのかしら、あれ。私が汲み取れていないだけだろうか。