温泉地にて

 木造アパートの2階角部屋、畳の上に敷いた煎餅蒲団で寝ていた。日は既に高く外は明るいが、眠くて動く気になれない。私の枕元には手作りの給湯器がある。土台と水受けの部分は陶器製で、深い青色がとても美しい。土台と水受けの間をホースと塩ビパイプで接続しているのが不恰好ではある。
 うとうと眠っていると、畳が濡れていることに気がついた。慌てて起きると、給湯器のホースとパイプの接続部分から水漏れしている。漏れる水は温くてどんどん溢れてくるので、元栓を閉めたりホースのバンドを締め上げようとしたり色々やってみるが、水量は弱まったものの全然治まらない。眠気で格闘するのが面倒になって、布団の隣にある浴槽にホース部分を突っ込んで急場をしのぐことにする。問題の解決には程遠いが、これで畳は濡れないで済む。
 畳の上を摺足で歩く音で目が覚めた。いつもの自分の布団かと思ったら、違うところにいる様子。現実の私の布団は東向きのはずなのだが、今寝ている布団は南向きになっている。まだ夢の続きか……。私は足音に背を向けて寝ていたので、そのまま寝たふりをしながら足音の動向を窺った。足音は私の1-2メートル背後で止まり、その後は何の音もしなかった。

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 「パイプから溢れだす水」という辺りがフロイト先生好みの夢だな。あと、足音は現実感があったので結構怖かった。福岡にいた頃はノックの音や呼ばれたような気がして目を覚ますことが割とあった。ここ数年はなくなっていたのだけど、それの類型パターンだろう。久しぶりに遭遇した。