「ヒモザイル」試し読み

 「東村アキコの新作か……」と何気なく読んでみて、あまりの不快さにびっくり。全編に流れる失礼さと上から目線すごい。社長(東村)の私用(ママ友の子どもの子守)をアシスタントたちにさせる。業務外の仕事です、労働の搾取ですよそれ? しかし全く自覚ない様子で、ママ友に「またいつでも子ども預けにおいでよ」とか言っちゃう。そして、業務外作業である子守を「上司の頼みだから」と引き受けてくれた気のいいアシスタント達のことを、ママ友の口を借りて「見込みがあるの?」「うちの子があんな風になったらどうしよう」と貶める。さらに、独身のアラサー女性たちのことも「女だけでこんな高い店に来て」「同じ話題ばかりで正直うんざり」と腐す。表題の「ヒモザイル」は、東村が主導する優秀な専業主夫養成計画のことだけど、従来の男女の役割分担が交替しているだけで、役割分担の固定化という意味では物凄く前時代的だし。もうツッコミどころを挙げたらキリがない。東村の中身はモラハラなおっさんだったのか。
 不快さ満点のマンガだが、この内容がサラッと読めてしまうのも凄い。東村の漫画力凄いな! この不快感もネタとして楽しめということなんだろうかという気さえしてくる。
 実録物っぽい内容の漫画は世に多いが、面白く楽しませる内容として描くのは実はかなり難しいことのかもしれない。そう考えると、あちこちに悪口雑言を撒き散らしながら、面白く読ませていた西原理恵子の度量の大きさを思う。