空を飛ぶ

 小雨が降る中、ツバメの雛を見つけた。民家の軒先にある巣から落ちたらしい。まだ動いているが、このままにすれば死んでしまうだろう。しかしウチに連れ帰っても育てられるとは到底思えない。どうしたものか。民家の人が出てきたので、事情を話して巣に戻してもらう。迷惑そうだったが応じてくれた。
 この一件以来、私は時折空が飛べるようになった。
 いつも飛べるわけではないし、飛べる時も自由に飛べるわけでもない。(あ、今日は空を飛べそうだな)と思った時に息を止めたり(もしくは思い切り吐いたり)、地面を蹴ったりすると、宙に浮く時があるのだ。高さも調整できない。風に煽られて物凄く高く上がってしまう時や、まだ下りるつもりはないのにどんどん降下してしまう時がある。高く上がってしまう時は呼吸を調整すると少し高さを変えられる。どんどん降下してしまう時はもう調整の仕様がないので、車などの来ない、安全な場所に降りられるよう急いで移動する。
 飛んでいる時は、歩いている時の姿勢のまま宙に浮いている。そして、歩くようにして移動する。しょっちゅう電線に引っかかるし*1、滞空時間も高度も自分で調整できないので結構不自由な点も多いが、風に乗って宙を歩いていると地面を歩くよりずっと速く移動できるし、車や建物を見下ろしながら歩くのはとても面白い。見慣れた景色がまた違って見える。顔を上げると、目の前に空の茫漠とした白さが広がるのも気に入っている。

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 昔から空を飛ぶ夢は「宙を歩いている夢」なんだよなあ。20年くらいずっとこのパターン。

*1:宙に浮いている分には、電線は触れても感電しないものだと初めて知った。