ドグラマグラ at DEL SOL(黒崎)

馬鹿は高いところが好き

 随分久しぶりのドグラマグラライヴ。何処でもどうぞとは言われたものの、テーブル席ばかりだし、二人掛けの席は入口そばで寒そうだし、カウンターに座ると迷惑かけそうだし……で試しに2階に上がると暖かい! 決めた、ここにしよう。一階全体が見渡せて気分がいい。がはははは。天下をとった気分だ。
 小物類の音が聞き取りづらいのが難点だが、冬は暖かくて良いですよデルソル二階席。

3年ぶりの観察記

 最初客は5人ほど。その後少しずつ増えて、最終トータルは10人ほど。初めて折尾でドグラマグラを見た時の様子に戻っている。思えば近年は演奏ペースも年4回程度、北九州内でのライヴになってきているので、本当に私が初めて見た頃の「地元で愛される北九州のツチノコ的バンド」という位置づけに戻っているような。19:15頃開演。開演時刻10分前になってもメンバーが1人しか見当たらず、もっと押すことを覚悟していたのでありがたい限り。
 「tomorrow never knows」をぐるんぐるんのヘヴィーサイケにしてないのが新鮮。ライヴに行くのを止めたのは、あの時期曲の展開が予測できるようになって飽きてしまい、移動の負担と魅力を天秤にかけた時に移動の負担の方を大きく感じるようになっていたからだった。あれから数年経ったから、結構変わっているんじゃないかと思っていたが、期待通り。アレンジで曲の印象ってどんどん変わるよな。近況報告を聞くような感じでフロアと前半のステージを観る。すっかり湿度の低い音になったなー、太極拳踊りの人は太極拳踊りしなくなったのかなー、いつも動画撮影していた女の人いないなーと、最後に観た時と比較して思い出してはしみじみ。
 後半は知らない曲が2曲続く。2曲目はコロブチカのステップを踏みたくなって仕方なかったが、ぎりぎり踏みとどまる。次に「平壌」のベースラインが入ると、若い男の子の客が吼えた。うん、「平壌」は燃えるよねえ。しかし結構長尺な即興演奏を入れて、簡単にカタルシスに達しさせない。目配せを仕合い、間合いをはかっている。息をするのも苦しくなってくるようなやり取りの後、全てのパートの音が一瞬止まった。「あ、来る!」と思った刹那、リフに雪崩れ込んだ時には脳から何か出た。こういう瞬間の快感は本当にたまらない。「千里眼」もこのパターンで、長い即興演奏が入っていた。このバンドの即興演奏は、客の注意を逸らさないことが大きな魅力だと思う。多分即興演奏の中に、耳を惹くフレーズを組み込むタイミングが上手いんだろうな。
 盛り上がっているのか酔っ払ったのか、はたまた何か不満があったのか、「千里眼」時に先ほどの若い男の子がフロア最前列の椅子を上段に抱えようとしては他の客から止められていた。わははは、パンクな子がおる。完全に野次馬目線で見物。
 アンコールはなかった。帰りの時刻が気になっていたので無くてほっとしつつ、少々物足りなくもあり。演奏良かったんだけどなあ。今日はギターの宮野さんのバースデーパーティーのような色合いもあったので*1、この後まだするのかな? と思いつつ帰路。「平壌」のベースラインを口ずさみながら帰る。

音源と記念写真

 休憩時、谷本さんと少し話す機会を得る。アルバムを出してから、演奏がしばらくアルバムのパターンになってしまって、抜けるのに苦労したという話を聞く。「即興演奏のバンドなのにアルバムを作ったからですかね……」と仰っていた。アルバムが出て嬉しかった私は何とも言えなかった。
 音源とは記念写真みたいなもので、「ある時期のバンドの姿を記録した物」だと思っている。バンドは生き物だから、メンバーが代わらなくてもバンドはどんどん変わって行く。だから、自分がとても好きな時期のバンドの姿を記録したものが出るのは嬉しい。そして、アルバムを聴いてからライヴに行くと「記録した頃」と「今」ではバンドがどう変わったのかがわかってさらに面白い。よく『ライヴとCD、どちらが価値が上か?』みたいな話を見聞きするが、私はあれは殆どナンセンスな比較ではないかと思っている。それぞれに別の価値があるので、比較しても無駄というか。
 マイブラも、dipも、CONVEX LEVELも、メンバーは変わらないけど数枚のアルバムを聴くとバンドの変化がわかって凄く面白かったもんな。ドグラマグラはどう変わったのかな。久しぶりにアルバムを引っ張り出して聴いてみたくなった。

*1:手作りケーキ+ハッピーバースデーを皆で歌う場面あり。宮野さんは赤いシャツを着ていた。還暦だから? さらにベースのフクヤマさんは赤いテンガロンハット(!)。宮野さんの還暦を祝って?