ドグラマグラ at TATOPANI(北九州・小倉)

 小倉のカレー屋さん、TATOPANIの閉店記念ライヴ。以前一度行った時にカレーを食べ損ねたのが心残りで、行くの行かないの前日まですったもんだした挙げ句の果てにようやく行けることになったライヴ*1。とにかく行けた。カレーも食べたしライヴも観られた。良かった良かった。

行く前がとにかく修羅場

 出発予定時刻をとうに過ぎたが、仕事が終わらない。顔つきも次第に険しくなり、仕事を回されそうになる度に「今日は帰りますからっ! 今日は残業できませんからっ!」と押し戻し続ける。新幹線に乗っても気が抜けない。昨日あまり寝てないし、仕事疲れもあって猛烈に眠いので、今寝たら間違いなく小倉*2は寝過ごす。「寝るな! 絶対寝るなよ! 寝たらライヴどころか死ぬぞ!(金銭的に)」と自分に声かけて必死に覚醒を維持。気分は雪山遭難隊。

カレーとファン交流

 数々の苦難を乗り越え、カレーのオーダーストップ5分前にTATOPANI到着。執念、という言葉が脳裏をよぎる。TATOPANIに来たのは3年ぶりかな? 相変わらずスパイスのうっとするにおい。以前来た時に沢山あった、ガロ系漫画を読むことを楽しみにしていたのだが、もう漫画は「ブラックジャックによろしく」しか置いてなかった。残念だが閉店が近いから仕方ないのかな。カウンターには、ニューエストモデルやじゃがたらの音源が置いてあって気になった。
 そしてようやく待望のカレー! スパイスのこなれ具合と薬臭さのバランスが凄く良い。近くにあったら心強い感じの味。付け合わせのキュウリも美味しかった。ベタベタに甘い飲み物を合わせたらもっと美味しく食べられただろうになー。頼まなくてちょっと後悔。
 カレーを食べる際テーブルで相席になった人と、ドグラマグラファンのプチ交流会発生。その人はプログレフュージョンが好きなんだそうで、私はロックとポップスが好きで。「好きの背景が大分違っている人達(色々な人達)に受け入れられる素地があるバンドなんですねドグラマグラは」と向こうがまとめてくれてニコニコ。そうですね。更にこの方、聴く音楽の範囲が何だか広い人で、ドグラマグラ以外の話も少しする。まさかドグラマグラのライヴでスピッツの話をする日が来るとは思わなかった*3。「ジュテーム?」が不倫ソングという見解は目からウロコ*4。そして私は自身のスピッツ愛について、わかりやすくて無難な説明を普段から準備しておくべきだと思った。「スピッツのどのようなところが好きか?」という問いに対し「歌詞が気持ち悪いところ」という答えは、正直な感想にしてもあまりに不親切過ぎる。
↓「ジュテーム?」収録アルバム。

ハヤブサ

ハヤブサ

特別リングサイド席に慣れるまで

 開演時刻が近づくにつれ人は増え、開演予定時刻を過ぎても客は増え続ける。全部で20〜30人くらいは来ていたかな? 店内ぎっちり。御近所さんや地元の人たちがやって来たという雰囲気で、この店の愛されぶりが門外漢の私にも伝わってくるような感じ。できるだけ他の人も見えやすいようにと詰めていたら、最寄り演奏者との距離が1mも離れていないような至近距離になってしまう。こんな位置で観るの初めてだ……。メンバーの日焼け具合とかまではっきりわかるんだが。
 「tomorrow never knows」で開始。位置が近過ぎて、音の聞こえ方が1つのかたまりとして捉えられないし、メンバーの大きさも普段の見え方とかなり異なるので何だか戸惑ってしまって落ち着かない。昔特別リングサイド席でプロレスを観た時、選手の大きさと気迫に呑まれて落ち着かなかったことがあるが、あの時の感じに似ている。前半最後「ナーダム」に入った頃にようやく慣れ始め、少し落ち着いて鑑賞できるように。

近くで見れば、普段と異なる発見

 後半は「平壌(仮称)」から。ベースとギターがうねりのパートを、バイオリンが別旋律を演奏する部位に燃える。今はこの曲が一番好きだなあ。聴いてると脳内から何か出る。「平壌(仮称)」の次はおどろおどろしい千里眼。最初は知らない曲かと思ったが、ベースが初盤から千里眼のフレーズを入れていたので千里眼だと判断する。今日は前半3曲が終わったところで、谷本さんが「今日は『ドグラマグラってこんなポップだったっけ?』ちゅう感じでしょ?」と言っていたのだけど*5、後半の千里眼がこの暗黒ぶりなので、前半と後半の対比を狙っていたのかな? と思ったりする。千里眼演奏中はドラムがツッコミを入れる時に多用する「カコッ」「ポテッ」という音が所々に入り、演奏中にこれが度々入るのは珍しくて耳を引かれる。この音はどうやって出しているのかと思っていたのだが、どうも太鼓の淵を叩いて出しているっぽい。近くで見るとこういう発見がありますな。ギターの音もいつもより良く聞こえる。ギターの音は凄く好きな筈なのにドグラマグラではイマイチ注意が向かないので、我ながら不思議に思っていたのだが、私が注意を向け易い領域と異なる音だからじゃないか、と今回聴いて推測する。いつの間にか偏った耳に育っているのかもしれん。

ドグラマグラからTATOPANIへ

 本日の谷本さんの歌はTATOPANIとドグラマグラについて。今までTATOPANIで行われたドグラマグラのライヴが歌われる。森川良哉さんとのライヴ、坂本弘道さんとのライヴ。リョーサイさんが堅肥りの若い人で驚いた*6ことや、坂本弘道さんと谷本さんのデュオをここへ観に来たこと*7なんかを思い出してちょっと遠い目になるわたくし。次の「友よ」はTATOPANIへ向けた曲だったのかな。一緒に「Hey,Jude」のフレーズを歌っている客がいたような気がする。
 アンコールは珍しくフクヤマさんが開始の音頭をとる。珍しく歌も歌い出した。って、Immigrant song!! 「ああああ〜♪ ハッ!」って、ちょっと!! わははは! 客爆笑。最後のメンバー紹介時にはドラムが行進曲のリズムを取り、「カニじゃないんだから!*8」とツッコミを入れられ、更に宮野さんとフクヤマさんから懐中電灯を当てられていた。そのまま次の谷本さんも懐中電灯を当てられ、「そんな当てられてもできるわけないやん!」とか谷本さん返していた。ははは。笑いっぱなしのままアンコールは終了、このまま打ち上げをするというTATOPANIを後にした。

*****

 いかにも御近所さんという佇まいのお客さんがいたり、観に来たお客さんの多さ、そしてバンドからの歌と曲。このお店が色々な人に愛されていることがよく伝わってくるライヴだったと思う。ただ、だからこそお店のことをほとんど知らない自分がこういう場に来ることは、ちょっと暢気過ぎるというか配慮に欠けるかな? とも感じた。来月もう1つ、このタイプのライヴに行くつもりでいるのだが、行く前にもう少しちゃんと考えておこうと思う。

*1:すったもんだの様子はhttp://d.hatena.ne.jp/hamahn/20080520#p1http://d.hatena.ne.jp/hamahn/20080523#p2

*2:博多から小倉までは新幹線で約15分。

*3:プログレ好きな人は聴く音楽の幅が広いと以前聞いたことはあるが、なるほどねえという感じ。

*4:恋愛時に生じる、ココロの揺さぶられが苦手な人の歌かとばかり思ってた。

*5:ポップかどうか私にはよくわからなかった。

*6:名前と尺八演奏者という点から、枯れたおじいさんの人物像を勝手に思い描いてた。

*7:私がこのデュオを見に行った前日に、ドグラマグラ坂本弘道でライブがあったのだ。

*8:これ、たまにこのバンドの人々が使う言葉なのだが、何のことかよくわからない。