Do you know Tora-san?

 昭和以前の建物が取り壊されるニュースを見ていて、ふと「『男はつらいよ』を見れば、建物の全盛(とまで行かなくても、往時の姿)を見られるのでは?」と思いついた。で、色々調べたら、年末に新作(!)が公開されるわ、過去作品のデジタルリマスター版が出てるわ、なかなかの充実ぶり。

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 Youtubeに落ちていた名場面集をチラッと見てみると、これが面白かった。歯切れの良い軽快な台詞回しに「誰が上手いこと言えと」な台詞の連発。寅さんはテキヤなので、口上の巧さは当然なのだがそれにしても。べらんめえ調の軽快な話し言葉も郷愁を誘う。20代前半で関東を出てから、本当にこのタイプの話し方には会わなくなったもんなあ。

 そして、見ていると色々考えてしまう。自分の分のメロンがない!と怒る寅さんの幼稚さ。フラリと帰ってきてまたフラリと出ていく寅さん。そんな寅さんを毎回家族は受け入れる。帰る場所があることのありがたさ、家族っていいなあと思ってしまう。現実には私は「家族は軛」という恐怖感があるので、「家族っていいなあ、私も家族を持ちたい」とはならないのだけど*1。自分がなるなら、受け入れる家族より寅さんになりたい。家族の立場にはなりたくないなあ。憎めない愛嬌があると言えど、あんな子どもっぽくて勝手な人が家族にいたら、受け入れられる気が全くしない。

 映画公開当時もある種の理想の家族像だったのかしらとか、やはり皆寅さんポジションに憧れたのかしらとか、少し見ただけで色々考える。映画をちゃんと見たい。

*1:別に物凄く問題のある家庭に育ったわけでもないし、両親は相応に私を愛し大切に育ててくれたと思うので、何故そういう恐怖感を自分が抱いているのかよくわからないところではある。