御宅訪問の罠

 「客」の自宅を訪問して話を聞いた。座卓を挟んで向かい合わせに座り、座卓の下には猫。相手の話が段々真剣味と熱を増してきて、私も大真面目に聞いていたのであるが、その私の手指を猫が物凄く嗅いでいた。私の手と猫は座卓の下なので誰からも見えないが、指を嗅ぎ出した猫は全然離れてくれない。猫のひげや濡れた鼻が指に当たって、くすぐったいやら冷たいやら。そして(何故私は猫に手のニオイを嗅がれながら、大真面目な顔して話を聞いているのだろう)と思い始めたら次第に可笑しくなってきて、笑いだしそうになって耐えられなくなった。仕方ないので、話を中断して猫を除けてもらった。大切な話が中断されたのは残念であるが、こういうこともあるのだなと。