戸川純 with vampillia at 広島CLUB QUATTRO(広島)
2017年に戸川純を観られるとは思っていなかったが、まさか広島で観られることになるとは、もっと思っていなかった。しかもwith vampilliaで。去年だったか、ドミューンで視聴したvampilliaとの演奏がとても良くて、一度観てみたかったこともあり物凄く嬉しい。
3日前に前売りを購入したら整理番号が50番台で、ガラガラだったらどうしようかとヒヤヒヤしたが、開演時刻直前に飛び込むとボチボチの入り。100人くらい? フロアの客席後方は封鎖されていた。
開演当初はvampilliaの人(真部さん?)がスーツで登場、アカペラで数節歌う。何故か一瞬テクマ!を思い出し、しかし彼は亡くなったから、絶対彼じゃないんだよなあとしみじみ。vampilliaは初めて観たが、叙情的なメロディと定期的に挟まれるノイズ&デス声の対比が気持ち良い。vampilliaで一曲演奏後、戸川純が出てくる。近影が全くネットに載らないし、ドミューンのインタビューでは「絶対叩かれているのはわかっているから、2chは見ない!」と言っていたし、腰を悪くして歩くことも大変らしいと聞いていたので、太っていたのは予想通り。ゴスロリ服も予想通り。腰から下までドンと太いのは、パニエをつけているのか(それとも……)?と思っていたら、パニエらしい。「パニエをつけていないと、ストンとしたワンピースを着ているようになってしまう」と言っていたが、パニエを着ることで見栄えが良くなったかどうかはイマイチわからない感じ。
声が出ないことがあるとライヴ評で見ていたので、今回はどうだろうかとハラハラしていたが、一曲目の「私が鳴こうホトトギス」の美しさに思わず落涙。「玉姫様」「肉屋のように」「バーバラ・セクサロイド」と、往年の名曲が続く。心配していた声も割と好調らしく、「バーバラ〜」のトーンが一気に上がるところもスッと出ていた。vampilliaによるアレンジも良いし、聴いていて楽しい。そして興味深かったのは、戸川純の手(腕)の表現の豊かさ。この手の動きが示す表現の豊かさは、彼女が女優をしてきたからなのか、それとも椅子に座って殆ど動かなかったので(身体が動かない分)手で示されることがより強調されたからなのかはわからない。しかし、声の表情は落ちている分を手の動きが補足するので、歌が貧しい印象はあまり受けなかった。
途中、予定していた曲順を彼女が間違えてしまったせいで少しスッタモンダしたり*1、歌の出だしが掴めなくて真部さんに合図を貰っている場面でハラハラしたり、1回目の「諦念プシガンガ」で歌詞を思いっきり間違えたり、色々あったが全然悪い印象を受けなかった。何というか、生きていることの美しさを体現している佇まいに圧倒されていたという感じ。私は彼女についての色々な経緯を知っているし、その経緯を知っているからこそ、そう感じたのかもしれない。経緯を知らない若い子が観たら「音を外す太ったイタいおばさんがマイクを持って吠えている」ように見えるのだろうかと考えたりもした。しかし、戸川純がこうして歌って、色々出来ないことが増えても、それを他の方法で充分にカバーしながら目の前にいるということは、色々考えてもやはり嬉しかった*2。この人のソロアルバムには(「わたし」の意思とは関係ない)「わたし」の生の制御不能さをテーマと感じた*3ものだけど、そのテーマは今もこうして続いているのだなあとしみじみ思う。
アンコール最後の「諦念プシガンガ」は「一曲目で納得が行かなかったのでもう一回」と。最後は立ち上がって歌っていた。腰への負担がちょっと心配になった。二時間弱のステージだったが、実にあっという間の時間だった。今日は仕事も良い出来だったし、ライヴも良かったし、凄く良い一日だった。
セットリスト
(第一部)(第二部)
- 蛹化の女
- 12階の一番奥
- ギルガメッシュ
- Men's JUNAN
- 赤い戦車
- Not Dead Luna
- 諦念プシガンガ
(アンコール)
- 怒涛の恋愛
- 好き好き大好き
- 諦念プシガンガ(二回目)
ユリオ(@nikukai_nari)さんのTL