パレードにようこそ

 イギリスの労働者階級といえばマッチョのイメージ。草食系男子は「ナヨナヨしてんなよ!」とヤキを入れられるイメージ。多分「トレインスポッティング」とギャラガー兄弟によって培われたステレオタイプだとは思う。

トレインスポッティング (角川文庫)

トレインスポッティング (角川文庫)

Definitely Maybe

Definitely Maybe

 なので、80年代の炭坑労働者(ゴリゴリのマッチョ)とゲイという組み合わせに、絶対暴力沙汰が起きるだろうとハラハラしながら見ていた。炭鉱労働者の集団に「どこの集団にも5%はゲイが含まれている」とか「皆さんは僕ら(ゲイ)と同じだ」とかスピーチして、ぶん殴られるぞ。しかし直接的な暴力シーンは全編通じてなかった。水と油の集団が次第に打ち解けていく経過は意外なほどスムーズで、おばちゃん達の下世話さと活発な好奇心がその原動力になったのだなあとしみじみした。喧噪のパーティーとおばちゃん達に爆笑しつつ、80年代のヒット曲、エイズパニックなど当時の時事ネタと炭鉱ストの敗北にしんみりしたり。そして最後のシーン、助けられる対象だった炭鉱組合がゲイを助ける側に回り、自分たちの誇りである旗をパレードで掲げる。立場の交替と、異集団の中で自分の大切な物を開示することの繊細な誇らしさに号泣。残酷なシーンもなく、シンプルに心温まるいい映画だった。もっと安心して観ていれば良かったのに、どうできないのは自分の性質だろうなあ。