「Saving 10,000―自殺者1万人を救う戦い」

 youtubeで無料公開されているというので見てみた。何故アイルランド人が日本の自殺問題のドキュメンタリーを? と思ったら、EUの駐日代表部で経済担当官として働き、在日年数15年のベテランだったらしい。
 仕事柄、自殺予防関係のことは一通り知っているつもりだったが*1、知らないことも多くて面白かった。あと「あ、この人知ってる」という人もちらほらいて、ミーハー的観点からも楽しかった。「1万人を救う戦い」は、フィンランドが自殺対策で30%自殺者数を減らすことができたという結果を受けて、日本も現在の自殺者の3分の1(1万人)は救うことができるはず、ということでこのタイトルがついたらしい。
 驚いたのは、電車に飛び込んだ人のうち40%は生き残ってしまうという話。しかも腕や脚切断という重症を負って。今後彼らは自殺未遂の代償(障害)を負って生きて行かねばならないということか。成功率が高い方法のように思っていたけれど、意外と難しいのね……。

 アルコールの及ぼす深刻な悪影響*2が世間で意外と取り上げられないこと、そのくせ自殺の仕方や自殺の事件が起きたことはメディアがしばしば取り上げることの指摘は、思わずブンブン頷きながら見てしまった。2000年にWHOが群発自殺防止のため「自殺の仕方や自殺後の周囲の反応を報道するな」と指針を出しているのに、マスコミは自殺報道を続けていた。2006年頃、私はラジカセでTVを聴いていた頃、文部科学省にいじめの告発や遺書を生徒や学生が送りつけることが多発したことがある。あの時はコメンテーターが「学校は自殺予防の取り組みを……」と神妙に話しているのを連日聴いているうちに、すっかり嫌になってしまった。おまえらの報道の仕方が自殺を煽る一因になっているのに、何を言っているのか。何という茶番、何というくだらないマッチポンプ
 嫌になったというより激怒してしまい、それから一切NHK*3以外のニュース番組を聞かなくなってしまって早7年。民放の報道姿勢は変わっただろうか。変わっていなかったらまた激怒してしまいそうで、未だに見る気になれないんだけど。

*1:自殺は高齢者の大きな健康問題だし、孤独や経済問題など私自身も深刻な自殺リスクとなりうる課題を抱えているので、全然他人事ではない。しかし、年間自殺者数の3分の1が60歳以上の高齢者だとは知らなかった。

*2:高齢者のアルコールの問題は現場ではよく見聞きする話。また、「アルコールは深刻な悪影響を及ぼすにも関わらず扱われ方(酒の宣伝など)が軽過ぎる」という指摘は盲点だった。自分もお酒は好きな方なので、ちょっと見方が甘かったかも。

*3:この時、NHKはニュースで連日の自殺予告を取り上げていなかった。