もう1つの人生

 職場(高齢者施設)に、必ず「お子さんは何人?」「御主人を大切にしてる?」と訊いてくる利用者さんがいる。うっかり「子どもどころか、夫もいません」と答えようものなら、「アナタそんな事じゃ駄目よ!」とスーパー説教タイム開始。しかし記憶障害があるため、次に会った時にはすっかり私のことは忘れており、再び「お子さんは……」「御主人は……」が始まるのだった。
 たまりかねて、架空の家族話をするようになったのだが、質問がその時々で微妙に変わるため、質問に合わせて架空家族の設定も広がっていっている。

  • 夫、子(5歳)、実母の4人暮らし
  • 夫は2歳上の同業者で、自分のことは自分でする人。むしろ私よりマメなので、私がズボラであることに腹を立てる時がある
  • 子どもは母が見てくれている
  • 二人目に関しては、「できたらその時はその時」というスタンス。特に希望してはいない。

妙に具体性を帯びてきた架空家族の設定を振り返ると、ホントにこういう人生になっていた可能性もあるんだよなあ(そして、そうはならなかったなあ)と、何だか遠い目になったりする。