アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー at THEATER CIEMA(佐賀)

 福岡のミニシアター系映画館が次々と閉鎖になり、この映画も福岡で上映予定が上がらず一体どうなることかとハラハラしていたが、佐賀のCIEMAで無事鑑賞。ホント、CIEMAは希望の星やで……! 今日の上映も6人しかいなかったけど、頑張って欲しい。私も極力ここで観ることにしよう。

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 大音量でクリエイションの音楽を聴きたくて、どうしても映画館で観たいと思っていた。狙い通り大音量で音楽が聴けて大変嬉しい。ジーザス&メリーチェイン、マイブラ、ライドなんかがかかると、思わず大きく息をついてしまう。背筋が伸びる。何故か左脚の付け根からつま先が痺れる。私の脳にはギターノイズに甘いメロディとコーラスが乗った音楽に関する神経回路ができていて、その手の音楽を聴くと気持ち良さが身体中に行き渡るようになっているのだと思う。大音量でないと聴き取れていなかったアレンジもあり、新しい発見もあって面白かった。そしてオープニング曲は「upside down」、エンディング曲は「I love Rock 'n Roll」と、いずれもメリーチェインの、しかし最初期と最後期の曲にも関わらず全然曲調が変わっていなくて笑った。「Munki」持ってないんで、こんな風だと知らなかったよ。この2曲、同じアルバムに入っていても違和感ないと思う。
Upside Down: Very Best of Jesus & Mary Chain

Upside Down: Very Best of Jesus & Mary Chain

Munki

Munki

 音楽にすっかり射抜かれてしまって、肝心のストーリーであるレーベル興亡史にまで十分な注意が回らなかったのだけど、ドラッグが彼らの音楽に影響を与え、活気づけたことはわかった。94-96年頃だったか、ロッキング・オン久保憲司さんと鹿野淳さんが対談していたのを読んだことがある。英の近年の音楽シーンはドラッグと切っても切れない深い関係があると話す久保さんに対し、「ドラッグがなくても音楽を楽しむことはできる」というような主旨の反論を鹿野さんがしていて、その時は鹿野さんの立場で読んでいたのだけど、あれは久保さんのコメントが当時の実情をよく示していたのだなと思った*1
 そして、ソニー傘下に入ってレーベル閉鎖までの流れに、個人事業主と会社組織*2で働くことというのは本質的に全く異なるのだなと思う。個人事業主として働くとは全体を把握しコントロールすることで、会社組織で働くとは自分が大きな流れの一部になることなのだなと。個人が把握できる量は少ないので、どうしても規模は限られるが、個人事業主にとってそれはそれで良いのだと。そして、アラン・マッギーとクリエイションについて所属アーティストが話す時「彼はともかく自分のことを信じてくれた」と述べ、マッギー自身も「契約をする時は人柄を見る。売れそうかどうかではない」と話していることに、人と人との繋がりが音楽を生み出していくというJOJO広重の言葉を思い出す。私はこれらの言葉にイマイチ実感が持てないでいるのだけど、多分それは本当のことなんだろう。
Upside Down: the Story of Crea

Upside Down: the Story of Crea

 どんどん出てくる地名、有名なクラブ(一部しかわからなかった)、挿入されるマーガレット・サッチャーの映像。多分イギリスの歴史や風土をよく知っていれば、もっと沢山の意味があることが伝わって面白かったのだろうと思う。そのことは残念だし、もう一度観たらまた違う発見や理解があるんだろうなあ。DVD買おうかしら。
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 今回客席に学ランを着た高校生?の男子がいたのだが、始終何か食べており、包装紙を開ける音が鳴り止まず気に障った。不快ではあったが、高校生なら20年前のレーベル映画なんぞ観てもそりゃ飽きるだろうと思う面もあり、彼らの行動は仕方がないもののような気もする*3
Upside Down [DVD] [Import]

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*1:薬でラリッたガイ・チャドウィックが服を脱ぎだし、イアン・ブラウンが不審そうにそれを見ていたという証言に笑った。イアンに不審そうな顔をさせるなんて!

*2:この辺あまり詳しくないので両者を対照として並べて良いのかイマイチ判断がつかないが。

*3:10代ならこんなもん観に来てないで、リアルタイムの音楽に胸ときめかして貪欲でいなさいよ、と思う私は年寄り臭さに拍車がかかっている。