終わらない悪夢

 最近、悪夢で絶体絶命の時は覚醒してしまう技を獲得した。すなわち、夢の中で身体に重大な危機が迫ると「これは夢なんだ、起きればここから脱することができる!」と夢の中の私が考えて、無理矢理覚醒してしまうのである。
 今朝、保健室のようなところで私が横になって休んでいると、入口の方から大きな話し声が聞こえ、ガラの悪そうな男が二人入ってきた。私は声の方向に上半身を起こしていたので、男の一人と目が合った。その時男がニヤリと笑ったので私はゾッとし、一刻も早くこの場を離れたくなった。しかし、姿勢と位置からして素早く逃げることはできそうになかった。怖くてたまらない、でもこれは夢なんだ。目を覚ましてしまえばいい。そう思って無理矢理目を開けた。
 目を開いた時、うすぼんやりした白いものが見えた。これは何だ、ここは何処だろう? 私の部屋のこの位置に、白いものはないはず。その「白いもの」が保健室によくある、布を張った衝立であると認識した時、私は背筋が冷たくなった。ここは私の部屋ではなくて、保健室なのか。先ほどのあれは、夢ではないのか!
 恐怖でアーッと声を上げそうになった時、「白いもの」は衝立ではなくて、壁に反射した外灯の薄明かりであることに気がついた。ほっとして周囲をよくよく見回すと、やはりここは見慣れた私の部屋だった。

******

 乾燥機を入れた布団に脚を突っ込んで温まっているうちに、半纏を着たまま布団で眠ってしまったらしい。随分寝汗をかいていた。