転居先

 新しく引っ越してきた家は6畳二間2階の貸間。まだ家財道具が一切入っていないため、がらんとして広い。畳の青さで部屋全体が灰がかった緑色に見える。
 一番大きな窓を開けると、公園に面していることがわかった。夕方のせいか誰もいない。遊具もほとんどない。端の方にブランコ(鉄棒もあったかな?)、真ん中に機能してなさそうな古い噴水があるのみ。芝は枯れてあちこちハゲチョロケになっていた。
 下りてみる。公園は閑散としていた。噴水は土管の口を上に向けて二つ並べたような格好で、枯れ葉が溜っていたり藻が生えていたりで水が澱んでいて、近寄りたくない雰囲気であった。しかしよくよく見ると静かに水が湧き出ていた。これ、泉だったのか。両方の口から静かに水が湧いているが、湧き出る水の勢いが弱いので、湧き出ている箇所から離れているところは水が澱んでしまっているようだった。夏はぼうふらがわくだろうなあ。ここで金魚を飼ったらいいんじゃね? ぼうふらを食べるだろうから、蚊の発生防止になるだろう。
 夕食は家主の一家と一緒に食べた。その時に金魚の提案をしてみたのだが、ここで一番影響力を持っているであろう家主の爺さんは無言のまま。他の家族は「本心はどちらでも良いが、私と家主の両方に気を遣って、今はじいさんの出方を待って態度を保留している」という様子。金魚を飼うことで泉が汚れるとか、何か気になることがあるなら飼わなくてもいいんですけどー、とかちょっと冷汗かきながらじいさんに話しているところで目が覚めた。