石井聰亙 DVD-BOX発売記念全国TOUR （出演（？）：石井聰亙、花田裕之、山部善次郎、スマイリー原島）at タワーレコード福岡店(福岡)
中学生くらいの頃に知って、以来ほのかな憧れでした石井監督。その監督の、生で動く姿を見られるってんでちょっとソワソワしていた。
仕事を終えてから急いで向かうも、開始時刻5分遅刻。既に監督と司会進行のスマイリーさんとで話し始めていた。監督細い！小さい！そして若い！！ 確か今49か50くらいのはずだけど、30代といっても納得するぞ……。遺伝子のなせる技なのか？
監督とスマイリーさんが引っ込むと、最初は花田裕之が登場。私はルースターズはどうも駄目で、昔々花田がピールアウトと共演したのを観た時も(確か「CMC」を歌ってた)、佇まいが何となく浮いてるなー位の感想しか持てなかったのだが、今回は普通にカッコ良かった。しかし圧巻は次の山善！ 昔々中学生の頃、音楽雑誌の山善インタビュー記事を読んで「山善て、なんか動物みたいな人だなあ」と思ったのだけど、基本的印象はそのままで実物はもっと濃かった！ スマイリーさんは比喩にブルースを持ち出していたけど、私はトム・ウェイツやシェイン・マガウアンの歌を聴いて「何じゃこりゃああ！」と固まった10代を思い出しましたわ。「中身がぶちまけられちゃってる」としかぴったりくる形容が思いつかなかった、あの感じ。60〜70年代からのロケンローラーの人って人間の造りが自分とは根本から違うんじゃないかと思う時があるのだけど、山善もそんな感じ。動物ぽくてちょっとバカバカしくて(褒めてます)、観ていると思わずつられて身体が動き出してしまう。「ハートのクイーンが〜」「最終のジェットに飛び乗りあの子の元へ」とか、凄く恥ずかしいフレーズ満載なんだけど、引きずりこまれていつの間にか気にならなくなってた。
山善濃いい！ ともう私は山善に目が釘付けになってたわけですが、次は花田のギターと山善のハーモニカでセッション。何故か花田にピッタリくっつく山善。スマイリーさんに指摘されてもますます寄る山善。ギターとぶつかる位寄っていて、演奏直前にそっと花田が距離をとっていたのが面白かった。演奏が始まれば、動作１つ１つに言葉が聞こえてきそうな動きをする山善。『ここで入ると？』とか『あ、もう一回？』とか言葉が聞こえてきそうな様子で花田を見つめている。そして自分が自信を持って動ける箇所になると俄然音も動きも大きくなる。素敵過ぎ。セッション最後の曲「キャデラック」は、花田の伴奏で山善が歌うスタイルだったのだが、山善が完全に入り損ねる。『え？ え？ いまどこ？』と言葉が聞こえてきそうな動作込みで、またもや花田を見つめる山善。曲が大分進んでも山善が入れないので花田が歌い出すと『ああ、そうそうそうやったそうやった！』という様子で歌い出す*1。要所要所で客が一斉に『キャデラック！』と叫ぶし、客もこなれてる。パフォーマンスのみならず動作に思考が丸出しの様子も含め、人間そのものが芸という感じでした山善。スバラシイ。
その後は監督＋スマイリーさん＋花田＋山善でトーク、花田と山善が引っ込んだ後は、監督＋スマイリーさんでトーク。このトークセッションで印象に残ったことをいくつか。
- 監督より3〜4歳年上だという山善と並ぶと、監督の年齢不詳ぶりがより明らかに*2。
- 70年代福岡の町並みが見られるのはなかなか興味深かった。監督は「（福岡の町並みは）物凄く変わった」と言っていたし。
- 当時、8mm映画撮影の許可を県警に取りに行ったところ、「そんなもん勝手にやっとけ！」と怒られたらしい。映像見ると銃撃戦とかしてるんだが……大らかな時代だったんですなあ。（？）
- 「ここ馬出」「ここの幼稚園*3、友達のお父さんが園長してて」等、いちいち入る監督の解説がオカシイ＆興味深かった。
- どの映画か、信用金庫強盗のシーンで強盗犯が車で逃走しようとするところを追いかけて、犯人の車に窓から乗り込もうとして投げ出される人がいたのだけど、監督「これ自分です」。誰もやりたがらなかったから仕方なく、らしい。3回やったけど本当に危なかったらしい。
- この頃(1978-1983年)撮った映画は、役者さん・スタッフ全員ほぼノーギャラだったらしい。
- しばしば博多、しかも監督の地元である博多区（千代町）で撮影していたらしい。『架空の近未来都市』という設定がしばしば出てくるけど、それが自分には博多なんですよ、というようなことを言っていたのが印象に残った。
全部で1時間半くらいのイベントだったのだが、タダで随分イイ思いさせてもらったなあ、とツヤツヤになって帰る。楽しかった。
