不健康なことをする自由

 同輩は栄養士である。彼女は資格絡みの倫理観が強いのか、私がカップ麺や甘い物を食べていると「カップ麺はカロリーと塩分の取り過ぎになるし、甘いものは歯にも良くない」と頻りに忠告する。私の好きでしていることだから放っておいて欲しいと最初は返事をしていた。しかし食べている度に言われるのでさすがにうんざりしてしまい、どちらも止めてしまった。今や毎回手製弁当、おやつなし。非常に健康的な食生活。
 同輩の言っていることは極めて正論だし、本当にその通りだと思うし、「私は正しいことを言っている、あなたが間違っている」と言い張られると反論できない。だけど、釈然としない気持ちは澱のように溜まっていく。「健康に悪いことをしている」のは承知の上で、リスクも覚悟の上でしていることなので、正しいからという理由で声高に主張を強いないで欲しいなあというのが正直な気持ち。不健康なことをする自由も認めて欲しい。
 しかし実際のところ、この「不健康なことをする自由」は健康重視の世の中で結構迫害されている。多分最も厳しく制限されているのは医療保健施設だろう。食事時間は決められているし、欠食すれば摂食行動にチェックが入る。お酒もいい顔をされないし、間食も病気や食べるものによっては制限される。勿論、以上のことは全てスタッフが観察していなければ把握できないことだから、入所者は必然的に「私は見られて(見張られて)いる」という不快感を感じることになる。しかし全ては「あなたのため」という大義でチャラにされる。ああたまんないよ、息が詰まる*1。身体のために、行動もこころも犠牲にしろというのか。
 不健康なことをする自由はもっと認められるべきだ。私は不健康なことをする自由を守るために立ち上がりたいと思う。とりあえず、カップ麺と甘い物を食べられるよう同輩と闘います。

*1:「施設で生活することに比べれば、施設外での生活など安楽なものだ」という言説は、結構正しいんじゃないかと思う。